同僚のスミと共に大阪から上京し、秋葉原の駅に降り立つユキ。彼女の目的は、蒸発したまま全く消息が分からない兄のヒサシの居所を探すこと。ヒサシから届いた葉書を手に、ユキは吾妻橋のたもとにたどり着く。すると、隅田川に添って点々とあるダンボールの家の片隅から兄がゴソゴソと出てきた。やがてとつとつと話し始める兄と妹。2人は、浅草に住むというヒサシの元妻・トモ子に会いにいくことになる――。『東京兄妹』('95)でベルリン国際映画祭の国際評論家連盟賞に輝いた名匠・市川準監督の遺作。東京の焦燥感と空虚感の間を揺れながらも、そっと繋がって生きる人々を描く。
市川準