何だか満たされない、でもハッキリさせたい…映画で女と男の「ズレ」を徹底検証!

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『テイク・ディス・ワルツ』 -(C) 2011 Joe’s Daughter Inc.All Rights Reserved
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  • 『ブルーバレンタイン』 -(C) 2010 HAMILTON FILM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
  • 『(500)日のサマー』 -(C) 2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
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女性なら、きっと一度は経験があるはずです。「何だか満たされない」という気持ちを抱えたことが。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で映画ファンにもおなじみとなったプラトンの「愛の起原」では、元々頭が1つ、顔が2つ、手足が4本ずつあった人間が、おごりによって神の怒りを買い、雷でふたつに切り裂かれてしまったとされています。そのため、元の姿に戻ろうとして、人は自分の片割れを探しているだと。愛とは元の姿に戻ろうとする欲求。つまり、不完全な自分を、完全なものにしてくれる相手を探し続ける生き物、それが人間だと言うわけです。

こう聞くと満たされないのも当然のように思えてきます。でも、男性からはあまり「満たされない」というつぶやきは聞こえてきませんね。自分の弱さをひた隠しにしているのかもしれませんが、なぜ女性ばかりがそんな不満を抱えるのでしょう。多くの映画監督が女性のデリケートな心の揺れを題材にする大きな理由は、その不安定さの正体を探りたいからなのかもしれません。

『テイク・ディス・ワルツ』&『ブルーバレンタイン』&『(500)日のサマー』で分析!女と男の「ズレ」

アルツハイマーに侵された妻との間に生まれた新たな関係性を通して、夫の孤独を描いた老夫婦の物語『アウェイ・フロム・ハー』が、監督第1作目ながら高い評価を得たサラ・ポーリーは、2作目『テイク・ディズ・ワルツ』で若い夫婦の不安定な関係性と、そのなかで揺れ動く妻の繊細な感情を描いています。何不自由なく暮らすものの刺激のない生活の中で、どこか夫との溝を感じ始めていた妻のマーゴが、ある男性と出会ったことで自分の心や欲望と向き合い葛藤していくのです。この物語を描くきっかけになったのは、サラが前作の主演女優ジュリー・クリスティから贈られた仏教関係の本。それを読むうちに「人間が人生に何か欠けているものがあると感じ、新しい人生に踏み出すことで空虚感を埋めようとするのはなぜだろう?」と思うようになったのだとか。マーゴの夫・ルーは、鶏肉だけの料理を収めた料理本を執筆中。仕事はとりあえず順調で、優しく、家族関係も良好です。マーゴとはウマも合い、常に冗談を言い合う仲。それでも、エキサイティングだったり、ロマンティックだったりする男ではありません。それを夫に求めるかどうかも妻次第ですが、見る限り問題は一切ないのです。ただ、大そう仲が良いように見えても、マーゴのように、より深く理解し合いたい、互いにより成長したいといったことをルーは望んでいない様子。今、上手くいっているから現状維持で大満足という感じが、会話や態度に見て取れるのです。

例えば、忙しいルーに対しマーゴが“寂しい”“子供を作る?”と言っても「寂しいならば、犬でも飼う?」とズレズレ発言。真剣に話し合うべきことを、妻が勇気をもって口にだしても、うまく避けようとするのです。軽口はたたき合うことができるのに、真剣な話が一切できない。こんなルーですから、記念日に訪れたロマンティックなレストランでも、気のきいた会話の一つもできず、マーゴを深く失望させます。これらのことは、致命的ではないにしても、重なっていくうちに女心に深い傷を作ること、意外と男性は気づかないようです。もしかすると、女性はより良きもの、より深きものを望んで積極的に働きかけようとするのに対し、男性は変化を好まず女性の働きかけを押さえようとする。この傾向の違いが、いつしか男女間の溝となるのかもしれません。恋愛中は、溝があれば埋めよう、互いを理解しようと男女が共に努力するものですが、夫婦になると男性の多くはそれをやめがち。ですから、夫婦になったら自然と関係性が深くなるというのは大きな勘違いで、かえって理解しにくくなるのかもしれません。

マーゴが、自分たち夫婦の間にあったモヤモヤしたものにはっきりと気づき始めたのは、出張先で気になる男性に出会ったからですが、彼はあくまでも外的要因にすぎないのでしょう。マーゴの変化に、夫のルーはうすうす気づいていたはずですが、典型的な男の行動に出ます。これぞ、不安から目を反らし、ないものとして過ごすという行動。はっきりマーゴが言わないのだから大丈夫だという認識なのでしょうか。一方、マーゴは自分の心の揺れ、満たされない心を、新しい男性を通して見つめ始めます。その不満や不安の正体が分からないとしても、確かに心が満たされないという事実を受け止めずにはいられないのが女なのですから。マーゴの人生はどこへ向かっていくのか気になるところですが、それは映画を観てからのお楽しみ。かなりひねりのきいたエンディングが待っていますから、ぜひ自分の気持ちと比べてみてはいかがでしょうか。

『ブルーバレンタイン』×「恋が冷める瞬間」

この作品に主演したミシェル・ウィリアムズ主演の『ブルーバレンタイン』も、大恋愛の末に結ばれた夫婦が、徐々に溝を深めていく様子を描いています。最もつらい時期に支えてくれたディーンとの結婚を決めたシンディですが、出会った当時、実は医学を志していた優秀な学生でした。一方、ディーンはアートの才能がありながらもそれを活かすわけでもなく、引っ越し業者として日払いの仕事をしています。釣り合わない2人と言えばそれまでですが、燃え上がる2人には関係ありません。でも、恋心が消え、共に過ごすのが日常となったとき、どうでもいいと思っていたことが、重要に思えてくることもありますよね。この2人の場合はどうでしょう。結婚して数年、シンディは看護師として働いていて、ディーンはペンキ塗りの仕事をしています。家族との時間を大切にしたいという理由で仕事に情熱は向けませんが、シンディにとってはそれが不満。生活に困っているわけではありませんから、愛があれば問題はないのでしょうが、トリッキーなのはふと気づいた現実的な不満で、百年の恋も冷めるということ。

よく耳にしませんか? 妻に離婚を言い渡された夫が、その瞬間まで妻の気持ちに気付かず、離婚される理由にすら思い当たらないという話。これこそ、決定的な理由さえなければ大丈夫だろうと考えてしまうことの危うさ。考えてみれば、ディーンだけでなく、ルーの状況もこれに近いものがあります。ただ、ディーンの場合は、嫉妬心が高じて妻の職場に乗り込んで暴れたり、朝からビールを飲んでいたりと問題もある人。ただ、愛し合っている二人なら、互いの嫉妬心すら快いこともあるはずだし、だらしのない相手にすら「私がいなきゃダメね」と思うこともあるはず。その気持ちを変化させたものが何かは、シンディにすら分からないのかもしれません。ただ不満、不安に気づき始めたとき、それを無視することはできないのが女。その正体をつきつめずにはいられず、結論を出すのが女です。例え、突き詰めた末に、諦めていまのまま我慢するか、新しい生活を始めるかと結論に違いはあっても、女ははっきりさせずにはいられない生き物なのです。

「やっぱり物事をはっきりさせたくない生き物である男となんて、心底合うわけがないじゃない!」となるわけですが、それでも一緒に生きようとするのが男女。だから面白いわけですね。私たちに唯一できるのは、男と女は違って当然だと肝に銘じることでしょうか。これだけで、だいぶ気も楽になりますし、理解できたらもうけものぐらいに思っておけば、相手の存在に感謝しやすくなるというものでしょう。

『(500)日のサマー』×「男女の逆転」

でも、女性たちのように“はっきりさせたい”願望を持つ男性が皆無なわけではありません。『(500)日のサマー』に登場するトムは、はっきりさせたい男の代表です。大好きなサマーの「私は誰とも真剣に付き合う気がないの。誰かの所有物になんかなりたくない」という気持ちを始めは受け止めたはずなのに、自分の心には嘘をつけず、どうしてもちゃんと付き合いたいと様々な努力をするのです。誰とも真剣に付き合いたくないと女性に言われれば、小躍りする男性もいるのでしょうが、トムは違います。「まあ、いいか」と思えない。自分の心と向き合って、心にどうしても生まれてしまう隙間の正体をとことん突き詰めてしまうのです。やっぱりこの女性と愛し合いたいと。この物語は、いままでの映画と比べると、男女の立場が逆転しています。そこが何とも面白いところ。ある意味では、世の中にははっきりさせたくない男ばかりかと失望気味の女性たちには、朗報なのかもしれません。こんな男性ならば、語りたいこともとことん語り合うことができ、互いのズレにも敏感になり、ズレが最小限のところで修正できるのかも。そういえば、最近は現実世界でも男女逆転の傾向がささやかれています。はっきりさせたくない男にうんざりさせられている女性たちは、トムのように発想の中に女性的な側面を強く持った男性を探してみるのもいいかもしれません。

もちろん、自分の片割れだと思える相手と巡り合えたらこの上ない幸せ。でも、それがどれほど難しいことかは、この3本の映画だけでなく、その他の多くの映画を観ても明らか。だからといって、片割れを求める気持ちを捨てられないのが女の性(さが)。その性から目をそむけず、今日も愛に生きていこうではありませんか。



『テイク・ディス・ワルツ』
8月11日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開

『(500)日のサマー』DVD
価格:1,490円(税込)

『(500)日のサマー』Blu-ray
価格:2,500円(税込)

発売日:9月5日(水)
発売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント

© 2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ブルーバレンタイン』DVD
価格:3,990円(税込)

『ブルーバレンタイン』Blu-ray
価格:5,040円(税込)

発売元:バップ
発売中

© 2010 HAMILTON FILM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

特集:埋められない、この気持ちって?
http://www.cinemacafe.net/ad/waltz
《text:June Makiguchi》

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