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【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day 8

1日、木曜日。8時00分起床。本日も快晴なり。今年の天気は本当にすごい。こんな晴天続きは10年に1度ではなかろうか!?

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『ブラ物語』(c)2018 TIFF
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1日、木曜日。8時00分起床。本日も快晴なり。今年の天気は本当にすごい。こんな晴天続きは10年に1度ではなかろうか!?

9時に事務局入り、パソコンに向かい、Q&A司会の予定確認。そして昨夜に続いて調整作業。

10時45分にカフェに行き、プライベート・インタビュー。今朝のお相手はカナダの『大いなる闇の日々』のマキシム・ジルー監督。カナダの中でもケベック州はフランス語圏であり、独自の映画シーンを形成している。昨今優れた作品が多く登場し、その背景に猛烈に興味を持っていた僕はジルー監督にじっくり話を聞いてみたかったのだ。そして期待以上の面白い内容で興奮する! キーワードは、やはりグザヴィエ・ドランの存在だ。ひとりの天才の出現がいかにシーンを塗り替えることか。面白過ぎる。まとめます。

11時半にインタビュー終わり、事務局に戻るとお弁当が来ている。なんと、カレー!! ああ、ここに来てのカレーはすごすぎる。わが運営チーム、おそるべし。辛めのカレーを選択し、チンして頂く。これを至福と呼ばずして何と呼ぼう!

12時半にシネマズに行き、コンペの『半世界』2度目のQ&A司会へ。阪本順治監督の冒頭のご挨拶に先月60歳になったというコメントがあったので、まずは僕から区切り的にも日本で自分の「半世界」を見つめ直すタイミングだったのでしょうかと尋ねてみると、あながち的外れではなかった様子。「前作『エルネスト』はキューバロケが多かったし、その前の『団地』は宇宙に行っちゃったので(笑)、地元の日本に戻って市井の人物を描くという気持ちになっていたのは確か」というお答え。阪本監督は強面に見えるのだけど、コメントがとても丁寧で、そして冗談や茶目っ気を絶妙に交えてくるので、Q&Aがとても充実するお相手だ。

稲垣吾郎さんを起用した経緯、そして長谷川博己さんの撮影中のエピソード、映画の色味を巡る意図、いくつかの劇中シーンの意味、などなど、客席からの質問がとても充実していて素晴らしい。

ここで僕にとっては奇跡が起きた。僕は何としても妻役の池脇千鶴さんについて質問したかったのだけど、自分から尋ねるのは控えていた。挙手がたくさんあるときに僕から質問することは極力控えたい。そして予定時間も終盤となり、女性の方が主人公の心象風景のショットの質問をされたあと、通路沿いの席で手を挙げている男性のお客さんが視界に入った。僕は直感的に、この方が池脇さんについて絶対質問してくれるに違いないと感じた。そして、僕がその方に質問を促すと、何と池脇さんの起用の理由を監督に尋ねた!

とてもちっちゃいことだし、誰にも理解されないかもしれないけれど、僕は猛烈に感動して、映画祭的なテレパシーの力とか、磁場が生み出す奇跡のコミュニケーションとか、映画の神様とか、いろんな感情が渦巻いてもう大変。ああ、こんなに感動と快感を一緒に味わえることは滅多にない!

Q&Aの内容がネタバレばかりなので、書けないのが辛い。阪本監督の会心の新作が披露される場に立ち会えた光栄を噛みしめたい。あと、これはいままで書いたり言ったりしたことがないのだけど、『半世界』の中で主人公が世界から隔絶された場所で孤独に仕事に向き合う姿に、実は地下に潜って誰にも会わず作品選定業務に没頭する時期の自分を重ねてしまったことを白状しないといけない。主人公のコウは自分だと思ったと言ったら笑われそうだけれど、映画ってそういうものじゃないかと思う…。

事務局に戻り、1時間ほどパソコンに向かう。そして抗えない睡魔に襲われ、机に向かったまま居眠り。10分くらい寝たのかな。昼寝の効果抜群で気分スッキリ。

15時半からシネマズに行き、『大いなる闇の日々』の2度目のQ&A司会へ。マキシム・ジルー監督とマルタン・デュブロイユさん。この作品の背景となる時代は、必ずしも二次大戦中でなく、どこか特定されない時代であるという質問から始める。主人公はチャップリンのものまね芸人であるが、その理由のひとつには70年前の『独裁者』のスピーチが持つ危機感がいまだに有効である現状に対する危機感がある。

終盤に登場する人物について、希望的な存在であるかという質問に対し、監督の答えは逆で、むしろ無垢な人間を「システム」に巻き込む悪魔的な人物であると解説する。神も悪魔も紙一重だ…。また、スタンダードのスクリーンサイズについて質問が出たので、僕からはビジュアルのイメージ作りについて追加質問してみる。この作品はダイナミックで美しい映像と、ダークで不条理なドラマとのコントラストが魅力なのだけど、監督もその点を意識したとのこと。マキシム監督の前作と今作とでスタイルが違うけれども、キャメラマンは一緒で、次にどういう作品を作るのか興味が尽きない。そしてケベック映画特集を企画したい!

16時15分にカフェに行き、プライベート・インタビューを『ブラ物語』のファイト・ヘルマー監督に対して行う。いかにしてセリフの少ない作品を作るようになったかを始め、監督の美学やこだわりについて詳しく聞いてみる。今回は監督の出身地のドイツ映画界というよりは、監督の作品世界を掘り下げる話が中心になった。実に個性的な天才型作家だ。今年は想定以上に実力のある個性派監督を招くことができたので、この流れを今後も継続していきたい。

映画祭事務局にヘルマー監督を連れて行くと、スタッフたちにポスターを渡してサインして大サービス。大いに盛り上がる。ヘルマーが監督が退場すると入れ替わりでエリック・クー監督と斎藤工さんが事務局に入ってきて、おお、映画祭らしい展開だ。

17時半に夜のお弁当が来たので、デミグラスソースのオムライスをペロリと頂く。

ダッシュでシネマズに向かい、スプラッシュ部門『銃』のQ&A司会へ。武正晴監督、村上虹郎さん、広瀬アリスさん、そして奥山和由プロデューサー。文字通り司会不要のQ&Aで、みなさんのクロストークで30分は余裕で過ぎて行きそうな楽しい雰囲気。原作の映画化権を取得した奥山氏が数年前の映画祭のカーペットで出会った村上虹郎さんに主人公の姿が重なったエピソードを始め、数々の背景や逸話が飛び交って途切れることがない。

中でもハイライトはリリー・フランキーさんのエピソード。いかに憂鬱そうにリハーサルに現れ、そしていかにそれを完璧にこなすか、細かい所作やアドリブのセンスに秀でた現場での様子が披露される。武監督はついにリリー・フランキーさんを体験できて、「リリー・デビュー」したと楽しそうに語る。

聞きたい質問はたくさんあったのだけど、あっという間に30分経過。この30分間が濃密なエンタメであったような空間だった! 僕としては、『銃』がいかなる古今のフィルム・ノワールを意識参照したのか、武監督とシネフィル談義もしたかったのだけど、まあ今回はそういう場にはならないかなと割り切っていたので(そしてそれが十分に楽しかったので)、次の機会を楽しみにするようにしよう。『百円の恋』でご縁の出来た武監督を再びお迎えできたのが嬉しいし、全くタイプの異なる『銃』の高評価を博していることで監督の職人技に今後いっそう期待が集まるのは間違いない。

そしてスクリーンを移動して、18時45分に『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』の2度目のQ&Aへ。パールフィ・ジョルジ監督、主演のポルガール・チャバさん、脚本のルットカイ・ジョーフィアさん。ちょっと時間が通常よりも少ないので申し訳なかったのだけど、会場内の熱い雰囲気は本日も健在だ。劇中のハンガリーの兄弟は監督の少年時代を反映しているのかどうか、あるいは監督が日本のアニメーションから受けた影響などと語ってもらう。

最後に俳優のチャバさんに、一言で言って監督はどういう人か?と尋ねると、答えは「好奇心の人」。まさに、僕が思った通り。大いなる少年だ、ジョルジ監督は。神の声が繋げて下さった今回の監督との縁を大切に育て、将来に繋げて行きたいと強く思う。

続けて19時50分から、「日本映画スプラッシュ」の特別上映で『21世紀の女の子』の上映前舞台挨拶の司会へ。今年の映画祭のハイライトのひとつだ。企画と監督の山戸結希さん、そして橋本愛さんが登壇。立錐の余地もないスクリーン2、空気が張り詰めている。特別感が劇場内に漂っている。

ふたりが登壇し、客席に挨拶したあと、山戸監督が作品の背景を解説する。いや、解説というよりは、監督の作品に対する宣言と呼んだ方がいい。途中で言葉に詰まって途切れてしまい、本人は恥ずかしがっていたけれど、客席に笑いが起きて場が一気に和んだので、これは怪我の功名だ。そもそも、スピーチ原稿を読み上げず、暗記して披露しようする志が立派なのだ。こんな人は滅多にいない。その後見事にリカバリーして、会場を感動させたのは言うまでもない。

上映始まり、事務局に戻ってトークショーについて準備するものの、やはりどう考えても時間内に収まりそうもなく、全員に作品の話をしてもらうだけで終わってしまうかな…、と考える。2時間あれば別だけど、50分ではなかなか無理か…。

上映終わる時間に劇場に戻り、22時10分から『21世紀の女の子』のトークセッションへ。14人の監督たちがずらりと並び、壮観だ。山中瑤子監督、加藤綾香監督、金子由里奈監督、枝優花監督、東佳苗監督、井樫彩監督、竹内里紗監督、ふくだももこ監督、安川有果監督、首藤凛監督、夏都愛未監督、坂本ユカリ監督、松本花奈監督、山戸結希監督、の14名。それぞれの作品の着想を語ってもらう。8分間の短編とはいえ、そこに込められた動機や思いは長編と差がないはずだ。14名の話が全て面白い。

僕から少しだけ共通点で気付いた点を質問し、さらに山中瑤子さんと山戸結希さんが想いを語り、50分はお開きとなった。限られた時間の中で最低限のお披露目は出来たと思うし、この祝福に満ちた空気は何物にも代えがたいものがあったと思う。女性監督をずらりと集めながら「女性監督」について語らないという作家主義の新たなスタートを表明する場として成立していたとしたら、嬉しい。将来、記念すべき上映であったとふり返ることになるのは間違いない。歴史的な夜だった気がする。

22時53分にシネマズを出て、夜のヒルズからEXシアターに向けて、2018年最速度でダッシュをかける。左ひざが痛いのでランニングを休んで久しいのだけど、猛ダッシュをするとやはりひざが痛い。くそー、ランニングに復帰することはできないかもな…。57分にEXシアター楽屋口に到着し、58分に舞台袖へ。上がった息を2分間で必死に整え、23時ちょうどに登壇。

今年の映画祭、最後のコンペ上映、そして僕の最後の司会業務は、『ブラ物語』。

ファイト・ヘルマー監督とドゥニ・ラヴァンさんが率いるチームはEXシアターを自由と喚起の渦に叩き込み、最高のエンディングを味合わせてくれた! まさに、コンペの最終を飾るにふさわしかった! そして観客の絶賛振りもハンパでなかった! アゼルバイジャン出身のお客さんが歌を歌ったり、作品チームが壇上で写真を撮り始めたり、もう大変。素敵なフィナーレ!

23時40分くらいに終了、サイン会をちらりと覗き、事務局へ戻る。オムライスの梅ソース味が残っていたので食べたら、これが猛烈に美味しくてびっくり。

0時半からアウォード・セレモニーの準備ミーティング。1時半に終わり、そこから別の作業にとりかかり、4時半に切り上げる。さすがにやばい。

映画祭の最終日は3日だけれども、受賞式(アウォード・セレモニー)は明日の2日。明日に賞が決まるなんて信じられない。みんなが受賞すればいいのに!という思いは今年も同じ…。ともかく寝ます!
《矢田部吉彦》

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