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【MOVIEブログ】2019カンヌ映画祭予習<「批評家週間」編>

カンヌ予習ブログ、ラストの5回目は「批評家週間」。長編2本目までの監督作品を集める新人部門で、ここから世界に羽ばたいた才能は数知れず、重要部門です。長編と短編のコンペに加えて特別上映もあります。チェックします。

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カンヌ予習ブログ、ラストの5回目は「批評家週間」。長編2本目までの監督作品を集める新人部門で、ここから世界に羽ばたいた才能は数知れず、重要部門です。長編と短編のコンペに加えて特別上映もあります。チェックします。

【批評家週間】
長編部門のコンペティションは7本です。国名は監督の出身地を記しています。

『Abou Leila』(アミン・シディ=ブメディエンヌ監督/アルジェリア)
『Land of Ashes』(ソフィア・クイロス・ウベダ監督/アルゼンチン)
『A White, White Day』(フリーヌル・パルマソン監督/アイスランド)
『I Lost My Body』(ジェレミー・クラパン監督/フランス)
『Our Mothers』(セザール・ディアス監督/グアテマラ)
『The Unknown Saint』(アラー・エディンヌ・アルジェム監督/モロッコ)
『Vivarium』(ロルカン・フィネガン監督/アイルランド)

『Abou Leila』(アミン・シディ=ブメディエンヌ監督/アルジェリア)
82年生、フランス育ち、アルジェリア人のシティ=ブメディエンヌ監督の長編1作目。

舞台は1944年のアルジェ。友人どうしのふたりの男が砂漠でアブ・レイラという名前のテロリストを探している。砂漠にいるはずがないと一方の男は考えているが、実は激しい性格の友人を都会から遠ざけることが彼の意図だった。やがてふたりは内なる暴力と向き合っていく…。

広大な砂漠と心理の駆け引きとの対比が期待できそうなドラマです。

『Land of Ashes』(ソフィア・クイロス・ウベダ監督/アルゼンチン)
89年生のウベダ監督は2017年に短編が「批評家週間」に選出され、その後この部門が主催するアトリエに参加して長編第1作の本作を準備し、見事に仕上げて長編部門入りというコースを辿っています。

13歳のシルヴァは、死ぬということは皮膚を変えることに過ぎないと考えている。狼にも山羊にも影にも、思い付くものなら何にでもなれるのだ…。

コスタリカ、アルゼンチン、チリ、フランス、の合作とのクレジットがあり、映画の舞台が南米のどこなのかまでは分かりません。IMDBの作品紹介文によれば「死にたがっている祖父の手助けをするかどうかシルヴァは悩む」とあり、カリブ海に近い地にて自然と生と死が見つめられる内容であると思われます。

神秘主義的作品なのか、子供心理探求系なのか、気になります。

『A White, White Day』(フリーヌル・パルマソン監督/アイスランド)
84年生のパルマソン監督、長編2作目です。1作目の『Winter Brothers』(17/日本では今年のノーザン・ライツ・フェスティバルで上映)はロカルノ映画祭で4つの賞を受賞したのを始め、世界中で賞を獲りまくりました。掘削現場で働くクレイジーな男の日々を実験的要素もふんだんに描いたぶっとんだ作品で、この監督は将来も追いかけたい!と思ったものです。その機会が思ったより早く巡ってきました。

HPの紹介文によれば:「アイスランドの僻地の村。警察官の男が、数年前に死去した妻と地元の人間が関係を持っていたのではないかと疑い始める。男は調査に没頭し、その執着が周囲にも影響を及ぼしていく。追悼と、復習と、無条件の愛についての作品」。

アイスランドの荒涼とした田舎の風景と、愛のオブセッション。ああ、これは間違いない。「批評家週間」のマストの1本です。

『I Lost My Body』(ジェレミー・クラパン監督/フランス)
74年生のクラパン監督はイラストレーター出身で、CMなどを手掛けたのち、2008年の初短編作品が90もの映画祭で上映されて評価を獲得しています。このたび初長編アニメーション作品を完成させて「批評家週間」入りです。

舞台はパリ、解剖室から男の手首が脱走し、もとの体を探している。手首はその体の一部であった男を懐かしみ、そしてガブリエルとの出会いも思い出す…。

僕が小学生の頃に「手っちゃん」という手首が主人公のマンガがありましたが(チャンピオン連載だったかな)、あんな感じかな?それはないとしても、フランスのアニメもちゃんと観たいです。

『Our Mothers』(セザール・ディアス監督/グアテマラ)
ディアス監督は78年生、メキシコとベルギーで映画を学び、パリの名門映画学校ラ・フェミスの脚本コースに進んでいます。10年以上フィクションやドキュメンタリーの編集を手掛け、本作が長編監督第1作です。

内戦における軍の責任を問う裁判が進行中の2013年のグアテマラ。若い人類学者のエルネストは失踪者の調査に協力している。そしてある老女の証言により、戦争中に行方不明となった父を探す手がかりが見つかる…。

南米諸国では軍事独裁政権時代の悲劇を描く映画が後を絶ちませんが、本当に映画を通じて初めて知ることが多いので、こういう作品こそ観なければと本気で思います。

『The Unknown Saint』(アラー・エディンヌ・アルジェム監督/モロッコ)
アルジェム監督は88年生。マラケシュとブラッセルで映画を学んだのちにカサブランカで製作会社を立ち上げ、短編を多く監督したのち、ロカルノとサンダンスとカンヌのラボに参加し、モロッコ・フランス・カタールの国際共同製作として長編第1作の本作を完成させています。

砂漠の中を男が走り、警察から逃げている。盗んだ大金を見つけた墓に埋める。10年後、出所した男がその地に戻ると、カルト崇拝の場と化しており、信者が「知られざる聖人」を詣でている。男は村に留まるが、何とかして金を回収したい…。

コメディータッチなのかな?これまた映像が雄大で見応えがありそう。個人的にも昨年マラケシュ映画祭訪問をきっかけにモロッコの若い監督を発見したい欲が高まっているので、要チェックです。

『Vivarium』(ロルカン・フィネガン監督/アイルランド)
79年生のフィネガン監督は第1作の『Without Name』(16)がトロントでプレミア上映され、「サイケデリックなおとぎ話」らしいですが僕は残念ながら未見。本作が2作目になります。

初の住居を探している若い夫婦が、田舎で怪しい不動産屋にそそのかされ、奇妙な家に住むことになってしまう…。

スリラーなのか、コメディーなのか、不条理系なのか、ちょっと分からないです。しかしタイトルの「ビバリウム」が飼育施設という意味だとすると、怖そうな予感がする…。主演がジェシー・アイゼンバーグとイモージェン・プーツということで「批評家週間」最大のスター起用作品であり、とても気になるところです。

以上、「批評家週間」の長編コンペは7本です。短編コンペは全10本。詳細紹介は割愛しますが、監督の出身地域の分布だけでも確認することに意味はあると思い、タイトルと監督名だけ記しておきます。

『Party Day』(ソフィア・ボスト監督/ポルトガル)
『The Trap』(ナダ・リヤド監督/エジプト・ドイツ)
『Without Bad Intention』(アンドリアス・ホゲニ監督/デンマーク)
『Journey Through a Body』(カミーユ・デゥジョイユ監督/フランス)
『Community Gardens』(ヴィトータス・カトクス監督/リトアニア)
『Lucia en el Limbo』(ヴァレンティナ・ラウレル監督/プエルトリコ)
『The Manila Lover』(ジョアンナ・ピーコ監督/フィリピン)
『Tuesday from 8 to 6』(セシリア・ド・アルス監督/フランス)
『She Runs』(ヤン・シュー監督/中国)
『The Last Trip to the Seaside』(アディ・ヴォイク監督/ルーマニア)

さて、「批評家週間」の中にも賞の対象とならない「スペシャル・スクリーニング」の長編が4本あります。

『Litigante』(フランコ・ロリ監督/コロンビア)(写真)
『Heroes Don’t Die』(オード・レア・ラパン監督/フランス)
『You Deserve a Lover』(アフシア・エルジ監督/フランス)
『Dwelling in the Fuchun Mountains』(グ・シャオガン監督/中国)

『Litigante』(フランコ・ロリ監督/コロンビア)(写真)
ロリ監督は2014年に第1作『Gente de Bien』が「批評家週間」に選ばれ、その後70を超える映画祭で上映されるなど評価されています。2作目の本作は、今年の「批評家週間」のオープニング作品となりました。

コロンビアのボコダを舞台に、シングルマザーで弁護士の女性が、腐敗スキャンダル事件を担当しつつ、重い病気の母親の介護にも直面するというヒューマン・ドラマ。

感情移入がしやすく、見応えのある人間ドラマが期待されます。コロンビア映画も近年好調が続いており、その現在進行形の姿を確認するためにも重要な作品だと思います。

『Heroes Don’t Die』(オード・レア・ラパン監督/フランス)
有名なフランスの映画学校「ラ・フェミス」出身のラパン監督の長編第1作。

パリの街中、青年ジョアキムは見知らぬ人からボスニアで戦死した兵士が重なって見えると言われる。その兵士の戦死した日は、ジョアキムの誕生日だった。ジョアキムは自分が兵士の生まれ変わりなのかを確かめるべくボスニアに向かう。そこは戦争の亡霊に覆われた地だった…。

とても興味を惹かれますが、長編1本目なのにノンコンペであるのはどういう事情なのか、気になってしまいます。作品を観ればなるほどと思うのかな?主演にジョナサン・クジネ、共演がアデル・エネル(今年のカンヌに出演作3本!)。

『You Deserve a Lover』(アフシア・エルジ監督/フランス)
アフシア・エルジはアブデラティフ・ケシシュ監督『クスクス粒の秘密』(07)で一躍注目を浴び、アラン・ギロディー監督『キング・オブ・エスケープ』(09)などでも素晴らしい存在感を見せた実力派女優。2010年に1本短編を監督しており、今回が初の長編監督作品です。

恋人の浮気が原因で別れることになった女性が、痛手から立ち直ることが出来ない。相手の男性は自分を見つめ直すためにボリビアに発つという。狂おしい愛の感情を巡る男女の対話のドラマ。

主演を監督本人が務めています。女優が自分を演出するのは大変だと想像してしまうのですが、どうでしょう。脚本もエルジ監督によるもので、才人ぶりを見届けたいところです。

『Dwelling in the Fuchun Mountains』(グ・シャオガン監督/中国)
88年生、グ・シャオガン監督の長編第1作。映画の題名は、13~14世紀の中国の画家、黄公望による水墨画「富春山居図(ふしゅんさんきょず)」に由来していて、この傑作に描かれている風景は監督の故郷であるそうです。

監督は2年間にわたって地域の四季を撮影し、そこにひとつの家族の運命の物語を重ねる形で映画を作ったとインタビューで語っています。果たしてスケールの大きな中国監督の誕生なるか。本作は「批評家週間」部門のクロージング作品に位置づけされています。

「批評家週間」部門内の「スペシャル・スクリーニング」で紹介される長編は以上の4本ですが、同じく「スペシャル・スクリーニング」には短編も5作品あり、日本からは富田克也監督『典座 -TENZO-』も参加です。

以上、「批評家週間」の作品チェックでした。そして、5回に亘ったカンヌの各部門予習も以上で完了です。今年は例年以上に満遍なく充実している気がするのですが、どうでしょう?あとは現地で確認するのみ!

とはいえ、出張ではミーティングも多いので、作品を観てばかりいるわけにいかないのが辛いところですが、それでも1本でも多く観られるように気合いを入れて臨みます。そして今年も会期中ブログを書くつもりでいるので、そちらもどうぞよろしくお付き合い下さいませ!
《矢田部吉彦》

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