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【MOVIEブログ】2019東京国際映画祭 Day2

10月29日、火曜日。8時半起床、雨だ…。しかし昨日は見事に晴れてくれたので、これはもう天に感謝するとして気持ちを切り替えよう

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『喜劇 愛妻物語』
(c)2019 TIFF 『喜劇 愛妻物語』
  • 『喜劇 愛妻物語』
10月29日、火曜日。8時半起床、雨だ…。しかし昨日は見事に晴れてくれたので、これはもう天に感謝するとして気持ちを切り替えよう。外に出るとなかなか寒い。お客さんの出足に影響し過ぎないといいなあ。

9時から職場で本日の予定を確認し、しばしパソコン仕事。そして作品の観直しを続ける。

11時45分から「スプラッシュ」と「アジアの未来」の審査員のみなさんとのブリーフィング・ランチがあるので、ヒルズ内のイタリアンに向かう。

スプラッシュは、カンヌ映画祭のクリスチャン・ジューヌ氏、釜山映画祭のナム・ドンチョルさん、そして大九明子監督。「アジアの未来」はタイのピンパカ・トーウィラ監督、ヴェネチア映画祭のエレナ・ポラッキさん、そして中村義洋監督。豪華だ…。

それぞれの部門の選定基準を(ランチ欠席の石坂健治プログラミング・ディレクターの意見も代弁しつつ)説明し、そして賞について考え方を共有する。映画祭プログラマーが多いので(ピンパカ監督もバンコク映画祭を率いている)話が早い。中村監督、大九監督も熱心に聞いて下さる。よい雰囲気。

12時半過ぎに座を辞して、12時45分に、ついに今年初のコンペ上映、そして司会。いよいよ僕の映画祭も開幕だ。トップバッターはイタリアの『ネヴィア』。ヌンツィア・デ・ステファノ監督と、主演のヴィルジニア・アピチェラさん。

平日の雨の午前で不安だったのだけれど、客席は綺麗に埋まっている。ああ何と嬉しいことか。胸中で心底、観客のみなさんに感謝する。本当に本当にありがとうございます。こんなに嬉しいことはありません。

そしてお二人のゲストを壇上にお招きして椅子に座った瞬間から、ああ始まったなあ、気持ちいいなあ、という感慨に浸ってしまう。場内の雰囲気がとてもいい。

Q&Aは驚きの連続で、サーカスに惹かれて行くヒロインを演じたヴィルジニアさんは、実際にサーカスでアクロバティックなパフォーマンスを演じる曲芸師であるとのことで最初にびっくり。さらに自分の出身地を映画の舞台にした理由を語るヌンツィア監督は、サーカスで8年間働いた経験があるとのことで再びびっくり。事務職ではあったけれど、自伝的な要素を含むドラマを作るにあたってサーカスを絡ませることは自然の成り行きだったとのこと。同行していたイタリアの映画機関の人たちも初耳だったらしく、素晴らしいQ&Aでしたね、と後で言ってくれる。

僕はちょっと恥ずかしくてためらったのだけど、思い切って「イタリア映画でサーカスと言えばフェリーニを連想しますが、意識はしましたか?」と聞いてみると、「もちろんしました。ジュリエッタ・マシーナへのオマージュという意味も込めました」とのお答え。おお。

この映画はいわゆる「教養小説」と呼んでいいかもしれないと監督が語った『ネヴィア』、その魅力の一端に迫ることが出来たような、充実のQ&Aだった! 次回の上映もとても楽しみ。

13時半にQ&A終わって、上々のスタートを切ったQ&Aの余韻に浸りながら、森タワーの51階に移動し、海外プレスのみなさんからのグループ・インタビューの場へ。約10名ずつをお相手するグループ・インタビューを、メンバーを入れ替えて2回行うもので、ベトナム、ラオス、ブルネイ、インド、タイ、フィリピン、韓国、イギリス、シンガポール、ミャンマー、スペイン、イタリア、ブラジル、などの映画マスコミのみなさんに、映画祭の選定に際して考えたこと、あるいは映画祭の意義などについて、貧しい英語の語彙を駆使しながら、何とかお話ししてみる。

あまりスラスラと英語が出てこない。つくづく思うのは、本当に自分が言いたいことが分かっていないと、英語は出てこない。日本語だと話しながら自分の言いたいことに気づくことがあるけれど、僕の英語力ではそこまで応用が利かない。もうこれ以上英語が向上することはないのだろうかと、いつも落ち込んでしまう…。という気持ちは悟られないように、懸命に明るく話してみる。

15時15分にインタビューを終えて、15時半から、映画祭のネット情報配信番組「TIFFスタジオ」のロケハン。何回かゲストを迎えて配信をしてみたいのだけど、どこの場所が適しているか、小雨の中、同僚たちと映画祭の会場を一回り。

そのままEXシアターに移動して、16時15分にEXシアターに移動して、「アジアの未来」部門『ファストフード店の住人たち』の上映前舞台挨拶司会へ。石坂さん担当の部門なので、普段は僕が司会をすることはないのだけど、スケジュールの問題で僕におはちが回ってきたのと、ちょっと僕からやらせてほしいとお願いしたこともある。なにせアーロン・クォーク!

しかし、来ない…。16時25分の開演時間が近づいて、もう会場のすぐそこにまで近づいているとのことだったので、僕が舞台に出て、もう少しだけお待ち下さいね!とアナウンス。会場が待ち焦がれている空気に包まれているのがとても興奮する。

3分押しくらいで、無事にウォン・シンファン監督、ミリアム・ヨンさん、そしてアーロン・クォークさん登場! 東京国際映画祭に来ることが出来た喜びをしっかりと語ってくれて、完璧な上映前舞台挨拶だ。破顔というのはこういうことかな、と思わせるような喜びにあふれた観客の笑顔が素晴らしい!

個人的に残念だったのは、遅れて到着し、舞台挨拶終わると速攻で移動して行ったので、アーロン・クォークさんにひとことも挨拶が出来なかったこと…。ハハハ、しょうがないですね。Q&Aは石坂さんにおまかせ。

シネマズに戻り、17時からコンペ作『ディスコ』のQ&A司会。ヨールン・シーヴェシェン監督と、主演のヨセフィン・フリーダ・ペターセンさん。ああ、なんと素敵なお二人。ヨセフィンさんの放つ輝きはあまりに眩くて、隣で見つめていると目がつぶれそう。美し過ぎる。

このQ&Aもまた、かなり独特なQ&Aだった。過激な信仰を主題に持つ作品であることもあり、そして監督が少し小声であるということもあるのか、真面目な質問が厳粛な雰囲気の中で続き、会場の集中力が増している気がする。ノルウェーという国はそれほど宗教が強い国ではなく、そして安全な国であるというイメージがあるにも関わらず、過激な信仰がはびこる理由は何なのか。いま僕は『ディスコ』を再見したくてたまらない。

監督自身は無宗教であるといい、しかし人が何を信じようが自由であり、それを押し付けられることはやはり問題だと思う、という最後の言葉が深く響いた…。

次回の上映では、もう少し映画内容にもっと踏み込んだ質問をしてみたい。いくらでも語りたいことが尽きない作品だ。

そのままシネマズ内を移動し、18時からコンペの日本映画『喜劇 愛妻物語』の上映前舞台挨拶へ(写真)。足立紳監督、濱田岳さん、そして水川あさみさん。レッドカーペット上でご挨拶していたのだけど、昨日は水川さんから「たくさん誉めてくださってありがとうございます」と言われ、タジタジになってしまった。紹介文を読んで下さっていたとは…。いやいや、本当に映画が面白かったので…、とゴニョゴニョと口ごもってしまい、なんともはや。

まずは舞台挨拶。いきなり足立監督がカミカミで、これが本当に微笑ましくて場内爆笑で速攻で最高の雰囲気になる。濱田岳さんはいままで演じてきた中で最もひどい役でしたと挨拶されて爆笑を誘い、水川あさみさんは罵詈雑言を放つ妻役を演じた感想を語ってくれる。水川さんは心底楽しそうにされていて、近くにいた僕までワクワクしてくる。本当に魅力的な方だ! 場内の期待がピークに達したところで舞台挨拶終了、本編上映に突入。

ダッシュで移動し、18時半にヒルズ内のバーレストランへ。スプラッシュ作品の日本映画監督を中心にしたプライベート飲み会的交流会へ。20時まで、1時間半ほど交流。序盤のこの時点で監督たちどうしが親しくなってもらうと、映画祭もまた別の楽しみ方に繋がっていくはずなので、初対面の挨拶を交わしながら交流を始める監督たちの姿を見ると、僕も嬉しい。もちろん僕もここではじめて会話をする監督たちがほとんどなので、短時間だけれどお話しして回る。

20時に場を辞してダッシュし、シネマズに戻り、20時10分から『喜劇 愛妻物語』のQ&A。足立監督に加えて、濱田さんと水川さんもQ&Aに残って下さった! これは嬉しいサプライズ!

あまりにユニークな夫婦の姿を演じるにあたって二人で工夫したことはありますか、あるいは、子役との関係をどうやって築きましたか、そして監督がふたりをキャスティングした理由、など、興味深い話が濱田さんの爆笑コメントを時おり挟みながら繰り広げられていく。最高。

上映が終わってロビーに出ると、いきなりお客さんから「最高でした!」と話しかけられる。そして、足立監督と縁の深い中村義洋監督や、武正晴監督、大崎章監督たちが集まっている。「ヤタベさん、よくぞこの作品をコンペに選んでくれました!」と中村監督から言われて驚くやら嬉しいやらで、とにかく映画人からの評価がめちゃくちゃに高い。そして足立監督がいかに愛されている存在であるのかが分かる。

武監督が後でおっしゃっていたのが、足立紳さんのシナリオは突き詰められるまで突き詰められているので(本作は足立監督は奥さんとホン読みをして、しっくりこないセリフを徹底的に直して詰めて行ったとのことで、僕を含めて会場も笑ってしまったけれど、それほど練りに練り込んでいるということ)、役者さんが足立さんの脚本であればしっかり脚本通りにやれば絶対に結果がついてくると考えてくれるので、監督としてはこんなにありがたい脚本家はいないのだということ。

ちょっと語ることが多すぎる『喜劇 愛妻物語』。2回目の上映後Q&Aでは本日仕入れた情報を思いっきり監督にぶつけてみるつもり。絶対に面白い上映になるので、どうかお見逃しのなきよう!

続けてスクリーンを移動し、20時55分からスプラッシュ『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』の上映前舞台挨拶へ。倉本朋幸監督、主演の郭智博さん、冨手麻妙さん、和希沙也さんの3名。ヘヴィーな題材を真摯に描いた意欲作で、今回のスプラッシュのラインアップの中でも異色作だ。今日は僕は上映前の司会だけなので、質問は次回のQ&Aまでガマン。

21時半にヒルズ近くのレストランに移動して、内外の作品ゲストと海外マスコミ、そして日本映画監督協会が交流するパーティーへ。映画祭序盤なので、まだまだ挨拶が中心。あまりじっくりと語り合うというモードにはならないけれど、ともかくたくさんの人と一言だけでも交わしながらあっという間に1時間半。

22時45分にEXシアターに移動して、コンペ『マニャニータ』のワールドプレミア上映のQ&A司会へ。ポール・ソリアーノ監督と、主演のベラ・パディーリャさん。

映画の中の役とあまりに違うベラさんに昨日も驚いたのだけど、今日もとてもお美しい。そして今回も質問がとてもよかった。遅い時間であるにも関わらず、瞬時にたくさんの手が挙がり、ラヴ・ディアス監督とのコラボのやり方、そしてとても重要な役割を果たす劇中の音楽について、極めて興味深い解説を次々と聞くことが出来る。ラヴ・ディアスから渡された脚本はやはり短いものであったらしいのだけど、それをいかにソリアーノ監督が肉付けしたかは、是非上映を見て確認して頂きたい!

上映時間について質問が出て、その答えも素晴らしく、そしてそれに対する青年のお客さんの一言もとてもよくて、密度の濃い、充実のQ&Aだった!

23時50分に事務局に戻り、0時から、東京国際映画映画祭のネット情報配信番組「TIFF Studio」。初の試みとして、本日の出来事を僕の活動の範囲内で報告し、明日と明後日のチケット情報を配信。果たして僕はいま人が見るに堪える顔をしているだろうかと心配しつつ、35分程度の生配信を楽しく完了。

ふうー。夜の弁当を食べ損ねたので(ふたつあったパーティでももちろん飲み食いは出来ず)、ハンバーグ弁当とチキン弁当の2種類を同時に頂く。幸せ。

映画祭、最高のスタートを切ったのではないかな! そして実質初日からこんなに詰め込んだスケジュールで僕は大丈夫なのだろうか? しかし何だか楽しくて絶好調だ。とはいえ調子に乗らずに落ちついて行こう。

1時からブログをダラダラと書いて(ごめんなさい)、そろそろ3時。上がります! 充実の一日、お疲れ様でした!
《矢田部吉彦》

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