【MOVIEブログ】2019東京国際映画祭 Day5

11月1日、金曜日。8時45分起床、4時間睡眠で、まずまず。目覚ましアラームが鳴る直前に目が覚めるというのは、緊張しながら寝ているということなのかな。外に出ると晴天が続いているので、それだけで元気が出る。そろそろ折り返し、全くもって体調万全。

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『戦場を探す旅』
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11月1日、金曜日。8時45分起床、4時間睡眠で、まずまず。目覚ましアラームが鳴る直前に目が覚めるというのは、緊張しながら寝ているということなのかな。外に出ると晴天が続いているので、それだけで元気が出る。そろそろ折り返し、全くもって体調万全。

9時半から様々な調整ごと。懸案事項をいくつか確認すべく複数の人と話をして回る。あっという間に11時を過ぎてしまう。そろそろお弁当来たかな? と思ってお弁当が届く部屋に行ってみると、ガパオライス! 運営チーム、ナイス。わくわくしながら頂く。

11時半に劇場に行き、12時からコンペの日本映画『喜劇 愛妻物語』の2度目の上映のQ&A。足立紳監督をお迎えして、すぐに客席から質問を募ったところ、どのくらい実話に基づくのか、あるいはキャスティングの理由など、誰もがまずは知りたい内容の質問が相次ぎ、とてもいい流れだ。そして誰もが本作を愛していることが伝わってくる。

「この夫婦のさらなる行く末が見たいです。パート2が見たいです」との質問が飛び出し、場内拍手。足立監督曰く「語りたい内容はたくさんあるので、続編に興味はあるのですが、それも本作が興行的に成功しないと始まらない話なので、まずは本作の公開を頑張りたい」とのお答え。これは我々観客に課された宿題だ!

そして残り10分を切ったところで、本日はサプライズゲストをお迎えします! と僕が得意げに立ち上がってアナウンスし、お迎えしたのは足立監督夫人! 水川あさみさんが映画で演じる脚本家の妻のモデルとなかった方、つまりは足立監督の奥方だ。これには場内、一気にヒートアップ。

僕もいきなりのけぞったのが、劇中の夫婦が住んでいる家は、なんと足立監督の本当のお住まいだったということ! そこまでさらけ出すとは…。やはり覚悟が違う。だからこそこんなに面白い作品になるのだ…。濱田岳さん扮する劇中の夫より、実際の夫の方が数倍ひどい、と暴露したり(「でも記者会見で足立監督は劇中の妻より実際の妻が数倍怖いと発言されているのでおあいこですよね」と僕はツッコミ)、夫婦でホン読みをしたときのエピソードなど、もう大爆笑。そして、クライマックスのシーンを撮影した時のエピソードには、会場が逆に張り詰めたようになる。ちょっとこんなQ&A、滅多にない。

本作は2020年の公開とされているけれど、詳細はまだこれからということで、決定の暁には改めて盛り上げていきたい。本当に、足立監督の才能と暖かさに心から敬意を表します。

13時に事務局に戻り、長めのミーティングを3件。映画祭も折り返しともなると、クロージングに向かって色々と詰めることが増えて行く。まとまった時間が空くなら作品を観返したいのだけど、なかなかままならない。ちょっと焦る。

15時15分に劇場に戻り、15時半からコンペ『チャクトゥとサルラ』の2度目のQ&A。漢民族のワン・ルイ監督がモンゴルで映画を撮ろうとした理由(「モンゴルと長年の縁があり、長らくモンゴルで製作をしたいと思っていたところ、映画化に理想的な原作と出会った」)、あるいは、劇中で見られる家屋が遊牧から牧畜への変遷を表していることについて、そしてモンゴル出身の役者陣がどのくらい草原暮らしの経験があるか(「ジリムトゥさんとタナさんはともに今でも仕事の無いときは草原に帰って家業を手伝っている」、さらには現代の内モンゴルの若い世代の姿が本作には実にリアルに描かれている、など、興味深い話は尽きない。

Q&Aの途中で客席に見慣れた方の姿を発見していたので、最後はこの方に質問してもらおうと思って顔を上げると、なんとその方が既に立ち上がって、しかもマイクを手にしているではないか!

イランの名匠アミール・ナデリ監督が、いつの間にどうやって確保したのか、マイクを片手に立っている。「マエストロ、お願いします」と僕が驚きながらも促すと、「映像、エンディング、素晴らしかった!」と感想を完結に監督たちに伝え、そして「急いでいるので」とあっという間に消えていった。中国人勢は少しポカンとしていたけど、追ってナデリ監督のことを説明すると大納得で頷いており、そして場内は大いに盛り上がり、実に見事なQ&Aのエンディング。ナデリ監督、ありがとうございました!

いやあ、映画祭らしいなあ、と喜びながらスクリーンを移動して、「ワールドフォーカス」部門のタイ映画、コンデート・ジャクランラッサミー監督新作『私たちの居場所』のQ&A司会へ。映画祭常連監督のコンデート監督のQ&Aはいつでも担当したい。

本作はBNK48のメンバーが主演する青春映画で、とはいえいわゆる商業的なアイドル映画ではなく、コンデート監督の個性が如何なく発揮された、美しいアート系の青春映画。監督は製作の背景を、契機となった実母の病気というプライベートでデリケートな話を交えて話してくれて、こちらは神妙な気持ちになりつつ、映画の見方が深まっていく。

とはいえ、やはり本作主演のジェニス嬢とミュージック嬢の話はたっぷりしてくれて、嬉しい。BNKの人気順にキャスティングしたのではなく、面接を重ねて、役に合うメンバーを決めていったということで、ジェニスは天性の女優であったらしい。しかし僕が大ファンになってしまったのはミュージック嬢の方で、彼女の女優としての将来はどうかと質問したところ、あまり器用なタイプではないので、彼女の魅力が発揮される役は限られてしまうが、ハマるとすごいので、今後も起用するかもしれない、とのこと。是非お願いします!

僕はAKBのことは全く門外漢なのだけど(いまだに前田敦子さんと大島優子さんしか分からない)、BNKのミュージック嬢を応援しよう。通訳さんからあとから聞いたところによると、コンデート監督は「ヤタベさんがオタとは知らなかった」と笑っていたそうな。オタ(ヲタ?)はタイ語でも使われているそうな。なんと…。

スクリーンを移動して、17時半からスプラッシュの『花と雨』の上映前舞台挨拶司会。土屋貴史(たかふみ)監督、主演の笠松将さん、共演の大西礼芳(あやか)さん。

「長編第1作の、初上映の前、という瞬間は一生に一度しかないですが、今の気分は?」と監督に聞いてみると、本当に緊張しているとのことで、こちらまで体が硬くなってしまいそう。本当に、本当におめでとうございます。

本編でラッパー役に取り組んだ笠松さんは、長身で本当に素敵だ。少し近づき難いタイプの俳優さんかと思っていたら、明るく、とても気さくな方で嬉しい。初のラップが(出来るだろうとの予想に反し)いかに難しかったかを語り、モデルとなったSEEDAさんと会った時にいかに精神的なサポートを得られたかというエピソードを披露してくれる。そして、透明感という言葉がこれほど似合う方も少ないのではないかというほどお美しい大西礼芳さんは、難しい役柄への役作りについて、弟役の笠松さんと仲睦まじそうに語ってくれる。いいチームだ。

18時に事務局に戻り、鳥の南蛮から揚げ弁当を10分で頂いて(美味しかった!)、18時半にEXシアターへ。昨日来日し、初対面となる『列車旅行のすすめ』のアリツ・モレノ監督に挨拶し、そして楽屋で個人インタビュー。映画祭は後半ではなるけれど、まだまだこれから来日するゲストもいて、出会いは続くのだ。モレノ監督からスペインのインディペンデント映画事情を伺って、とてもとても興味深い。

そのままEXシアターで、19時半からイタリアの『ネヴィア』の2度目の上映のQ&A司会。映画の舞台となる、監督の出身地でもあるナポリ近郊の地の説明をしてもらい、そして本作に込めた思いを語ってくれた下りの「結局問題は環境などの外部ではなく、内にあるのです」という主旨の発言に、僕はストレートに感動してしまった。大地震の影響で10年近く仮設住宅暮らしを送った監督の言葉だけに、重みが違う。

ところで、ヌンツィア・デ・ステファノ監督に「プロデューサーのマッテオ・ガローネ(監督)はどのような貢献をされたのですか?」と聞いてみると、監督はケラケラと笑い、「全く何も! 現場にも来ないし、白紙委任状態で、完全に信頼してくれました。そして完成した作品を観てもらったら、とてもよい、と言ってくれましたよ」とのこと。「マッテオは日本に興味津々なのだけど、飛行機が怖くて来られないのです。なので、いま日本でせっせと動画を撮って送って、日本に来る気を煽ろうとしているんですよ」と監督がおっしゃるので、「審査員長の座を空けて待っていますとお伝え下さい」、と僕。いや、本気です。

20時に終わり、急ぎ事務局に戻り、準備をして20時45分から東京国際映画祭のネット情報配信番組「TIFF Studio」のライブ配信。本日の出来事報告と、週末のチケット情報を伝える。連休ということもあってチケットは求めにくくなっているけれど、それでもまだ余裕のある上映もあるので、最後まで伝える努力を続けていきたい…。

番組の後半では、キッチンカーで展開している日本酒のアピールをする時間を設け、達人級の利き酒の匠の方にご登場願って解説をしてもらう。実にナイスな方だったので、とても盛り上がる。僕も試飲したかったけど、まだ司会もあるし、我慢するしかない。代わりに学生応援団の(もちろん成人している)メンバーに試飲してもらったりして、なんだか一瞬映画のことを忘れて和み、TIFF Studioのおかげでいい気分転換になった!

22時半にEXシアターに戻り、コンペのフランス映画『戦場を探す旅』(写真)のQ&A司会へ。オーレリアン・ヴェルネ=レルミュジオー監督と、主演のマリック・ジディさん。マリックさんは本編を初めて見たということで、少し興奮と緊張が入り混じったような口調で本作参加の背景を語り、監督は完璧に冷静な佇まいで映画の画面作りなどについて説明してくれる。

強調していたのが、西部劇の定型にはまることを避け、つまりは乾いた西部でなく、湿り気のある土地で撮影することが映画にとって重要だったということ。泥や霧で、主人公は先に進めない。その主人公のもがきが、映画の主題へと繋がっていく…。参考にした小説や絵画、あるいは19世紀の戦場カメラマンの撮影した写真など、映画の美的側面への詳細な説明が展開されて、聞き入ってしまう。

次回の上映では、マリックさんの共演者も来日するので、今日とはまた違った雰囲気が楽しめそう。まだまだ触れたい点がたくさんある本作、一見シンプルだけれど、実に奥が深い。

サイン会の列に同僚の姿があったので(映画祭業務とは別部署)、感想を聞いてみると大好きであったとのこと。嬉しい。あるシーンについて「あそこ、気付いた?」と聞いてみると、見事に気付いていなかったので、列に並んでいる人たちに聞いてみる。やはり気付いていない人が多かったみたいで、ふふふ、次回の上映時はその話をしよう。

23時半に、海外ゲストをお招きした、映画祭ヘッドが主催するカラオケパーティへ。本当に、映画祭のこのタイミングでのカラオケは、本当に全ての体力と気力を総動員しないと無理なので、キツくないと言えば嘘になるのだけど、ここはやはり行かないわけにいかない。

そして、やはり行くと楽しいのだなあ、これが。もはやカラオケに行く機会は1年でこの日だけだけど、行ってみると外国人ゲストはめちゃくちゃ盛り上がっているし、すごく楽しそうにしているのでこちらが楽しくないわけがない。いやあ、カラオケの魔力はすごい。

とはいえ、シラフのカラオケは味気ないのも確か…。ウーロン茶片手に、僕は1曲だけ歌い(オアシス「ワンダーウォール」)、あとはみなさんと盛り上がりつつ、1時半過ぎにこっそりと退場。

事務局に戻り、チキン三色弁当をチンして美味しく頂き、しばしボケっとしてからブログを書きはじめて、今宵もそろそろ4時。明日から連休で、スケジュールもいよいよ過密になるので、しっかり寝て備えよう。
《矢田部吉彦》

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