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【映画と仕事 vol.13 前編】「岸辺露伴は動かない」柘植伊佐夫 映画・ドラマに欠かせない “人物デザイン”という仕事はどのように誕生したのか?

映画やドラマの仕事に携わる人々に話を伺う連載【映画お仕事図鑑】。12月27日より放送されるドラマ「岸辺露伴は動かない」にて人物デザイン監修を務めている柘植伊佐夫さんにロングインタビューを敢行! 高橋一生演じる露伴はどのように作り上げられていったのか?

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柘植伊佐夫/photo:Naoki Kurozu
柘植伊佐夫/photo:Naoki Kurozu
  • 柘植伊佐夫/photo:Naoki Kurozu
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  • 「岸辺露伴は動かない」橋本陽馬(笠松将)※第4話「ザ・ラン」 (C)NHK
  • 「岸辺露伴は動かない」乙雅三(市川猿之助)※第5話「背中の正面」  (C)NHK
  • 「岸辺露伴は動かない」大郷楠宝子(内田理央)※第6話「六壁坂」 (C)NHK
  • 「岸辺露伴は動かない」泉京香(飯豊まりえ) (C)NHK
  • 「岸辺露伴は動かない」岸辺露伴(高橋一生) (C)NHK
  • 「岸辺露伴は動かない」 (C)NHK

岸辺露伴はどんな素材のヘアバンドをするべきか――?

たかがヘアバンドなどと言うなかれ! それは作品の世界観や方向性を決定づける…ひいてはドラマの成否に関わる非常に重要かつデリケートな問題なのだ。

映画やドラマの仕事に携わる人々に話を伺う連載インタビュー【映画お仕事図鑑】。今回、ご登場いただいたのは、映画『シン・ゴジラ』『翔んで埼玉』、大河ドラマ「龍馬伝」、「平清盛」などで登場人物の衣装・ヘアスタイルといった扮装を統括する「人物デザイン監修」を担当してきた柘植伊佐夫。

「岸辺露伴は動かない」

12月27日より3夜にわたって放送される、荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の人気キャラクター・岸辺露伴を主人公に生まれたスピンオフ漫画を実写ドラマ化した「岸辺露伴は動かない」でも、柘植さんは人物デザイン監修を務めており、高橋一生演じる岸辺露伴、飯豊まりえが演じ人気を博した編集者・泉京香ら登場人物たちの衣装、ヘアスタイルなどを緻密に作り上げている。

放送を前に柘植さんにロングインタビューを敢行! そもそも“人物デザイン監修”とは何をする仕事なのか? 柘植さんはどのようにこの世界に足を踏み入れたのか? そして「岸辺露伴は動かない」の制作の裏側に至るまで、前・後編の2回にわたってお届けする。まずは【前編】、人物デザイン監修について、そして大河ドラマ「龍馬伝」や「平清盛」に携わっていくことになったエピソードについて。


>>>インタビュー【後編】を読む

デザインの決定から撮影現場の管理まで――衣装とヘアデザインの“クリエイティブ・ディレクター”


「岸辺露伴は動かない」第4話

――まもなく放送となるドラマ「岸辺露伴は動かない」などで、柘植さんは「人物デザイン監修」とクレジットされています。この「人物デザイン監修」という仕事の内容について教えてください。

まず、衣装とヘアメイクという、扮装全体のデザインを決定するクリエイティブ・ディレクションをしているのと、実際のそれらのデザインワークをするという2点ですね。

さらに、プロダクション(撮影)に入った際に現場の差配――準備段階でデザインを決めても、現場でそれを維持していくことって大変なので、そのマネジメントもしています。

――事前のデザインの決定に加えて、実際の撮影の段階で現場にも足を運ばれてマネジメントを行なうということですね?

そうですね。いま、ちょうど『シン・仮面ライダー』(※扮装統括と衣装デザインを担当)に入っているんですが、現場にもかなり足を運んでいます。ちなみに“扮装統括”と“人物デザイン監修”は基本的に同じことで、プロダクションによってクレジットを載せる際のイメージなどに合わせて言葉を変えているだけです。

ただ、現場に出るかどうかは作品や状況にもよって異なります。『シン・ゴジラ』でも扮装統括をやったんですが、デザインとしては、それほど現場で難しいコントロールが必要な作品ではなかったんです。要するに、登場人物の多くは政治家と官僚で、防災服かスーツを着ていることが多かったので。あの時はあまり現場に出ることはありませんでした。

今回の『シン・仮面ライダー』ですと、非常に管理が難しい衣装なので、そういう場合は現場に出ています。

「岸辺露伴は動かない」第6話

――もともと、柘植さんはヘアメイクを学ばれて、この世界に入ったそうですね。そこから現在のように、衣装も含めた扮装の全体をディレクションするようになった経緯を教えてください。

僕がヘアメイクの活動をやっていたのは80年代ごろで、自分が担当するのは首から上なんですが、意外と自分で差配をさせてもらえるページが多くて、自分で全体のディレクションをしていくということは多かったんですよね。いま考えてみると、部分的なところではなく、全体的なデザイン像やコンセプチュアルな部分をつくっていくということは、あの当時からやってはいたんですよね。

映画で人物デザイン監修の仕事をやるきっかけになったのは、2008年公開の『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』でした。前作の『ゲゲゲの鬼太郎』(2007年公開)では“ビューティーディレクション”という肩書きで、要はヘアメイクプランナーをやっていたんですが『ゲゲゲの鬼太郎』っていろんな妖怪が出てくるし、半妖怪のような存在もいるし、人間世界もあるので、全部で三層の登場人物たちがいて、すごく大変なんです(苦笑)。

この三層をそれぞれ映画的表現にするとなった時、スタッフの担当領域をどうするのか? 人間だけでもヘアやメイク、かつら、爪もあるし、これが妖怪となると特殊メイクも入ってきます。じゃあ妖怪のかつらは、誰が担当するのか? 特殊メイクのスタッフ? それともヘアメイク? とか大変な状況になっていて、全体を仕切るスタッフが必要だということで、プロデューサーから「全体を見てほしい」と僕に白羽の矢が立ったんですね。その時は“キャラクター監修”という肩書きで入ることになりました。

すごく大変でしたけど(苦笑)、こんなことをやるのはこの1回きりだろうと思ってたら案外、その後も同じような依頼をいただくことがありまして。三池崇史監督の『ヤッターマン』では“キャラクタースーパーヴィジョン”という名前で同じような全体の統括をやらせてもらいました。

名称に関しては、僕の仕事って以前はなかった仕事なので、名前が付けにくかったんですよ。ただ、ファッション業界から見たら、こういう仕事の進め方はいたって普通で、メゾンがあって、そこにデザイナーではなく、クリエイティブ・ディレクターがいるというのはいまでは普通なんですよね。トム・フォード以前は“デザイナー”という肩書きでしたけど、トム・フォードの出現以降、クリエイティブ・ディレクターとして衣装だけでなく全体の世界観を作り出していくという方向にシフトしていきましたけど、それと同じですね。

映画やドラマの世界で、扮装面におけるクリエイティブ・ディレクションをしていると考えていただければ、わかりやすいのかなと思います。


《photo / text:Naoki Kurozu》

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