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19世紀末フランス、ベルエポックの再現度を徹底解説『オフィサー・アンド・スパイ』

19世紀のフランスで起きた、歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した『オフィサー・アンド・スパイ』の再現度を検証。

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『オフィサー・アンド・スパイ』(C)2019-LÉGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINÉMA-FRANCE3CINÉMA-ELISEO CINÉMA-RAICINÉMA
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  • 『オフィサー・アンド・スパイ』(C)Guy Ferrandis-Tous droits réservés
  • 『オフィサー・アンド・スパイ』(C)2019-LÉGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINÉMA-FRANCE3CINÉMA-ELISEO CINÉMA-RAICINÉMA

19世紀のフランスで起きた、歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した『オフィサー・アンド・スパイ』。スリルあふれるサスペンスフルなストーリー展開をさらに盛り上げるのが圧巻の映像美。その細部にまでこだわり、作り込まれた19世紀フランスの再現度の高さを、慶應義塾大学の教授で日本フランス語フランス文学会会長の小倉孝誠氏が解説した。


>>『オフィサー・アンド・スパイ』あらすじ&キャストはこちらから

映画の時代背景は、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスが栄えたベルエポック時代。まるでそのベルエポックの時代にいるかのような没入感を覚え、目の前に広がる当時のフランスの情景に惹き込まれていく本作。各シーンにおけるセット、色、人の動きは画家や絵そのものを参考にして、パリの再構築を試みている。また、パリの街並のみに止まらず、衣装や小道具へのこだわりにも注目で、劇中に出てくるマル秘書類は、何千という写真や昔の文書を参考に全て映画のために作られている。

これまで憧れの時代として『ミッドナイト・イン・パリ』など数々の作品でも描かれてきたベルエポック。中でも本作は細部にこだわりつつ、時代の雰囲気を見事に再現してみせていると語る小倉さん。


「華の都パリ」のイメージはここから


まずは、社交界の夜会。ベルエポックとは「美しい時代」という意味で、実際フランスは経済的に繁栄し、文化的な爛熟を迎えていた。上流社会の社交シーンはそれをよく示している。大邸宅に住む裕福な貴族やブルジョワは、自宅に大勢のひとを招いて夜会を催した。映画では艶やかなデコルテ姿の女性たちが登場する。この時代に一世を風靡した風俗画家ジャン・ベローの作品に出てきそうなシーン。「華の都パリ」のイメージはこの時代に生まれた。


週末やヴァカンスは田舎を散策


絵画的な描写を思わせる、主人公ピカールが恋人や友人たちと田舎でピクニックをするシーンも美しい。モネなど印象派の風景画に見られるような、明るく楽しげなシーンだ。ピクニックは、19世紀半ばから鉄道が発達し、人々が豊かになり自由な時間が増えたことで生まれた習慣で、ベルエポックはレジャーが誕生した時代でもあった。実際、いまでもフランスの田舎は美しく、週末やヴァカンスの時期に田舎を散策することはフランス人の大きな楽しみだ。


ロートレックの絵のようなキャバレー


ピカールが捜査のために、場末のキャバレーに足を運ぶ場面がある。場所は大衆の娯楽場だったパリ北部モンマルトルあたりだろう。テーブルでは客たちが飲食に興じ、舞台では女性ダンサーたちがフレンチカンカンを踊っている。1890年代、モンマルトルでボヘミアン生活を送りながら、踊り子やカフェを描いたロートレックの作品が思い出される。世紀末パリの雰囲気を伝えるあざやかなシーンである。


洗練されたフランスの軍服


ドレフュス事件はフランス陸軍で起こった出来事であり、映画では軍の内部を描いたシーンが多い。当時フランスは世界でも有数の軍事力を誇り、それによって植民地政策を推し進めた。ピカールを演じるジャン・デュジャルダンは軍服姿がよく似合うが、実際、フランスの軍服は美しいとされ、作家モーパッサンの作品に出てくるように軍服が似合う男は人気があったという。


ベルエポックのフランスは、大衆新聞の黄金時代


さらに、新聞売りの少年が、“J’accuse”が掲載された新聞を売っている場面にも注目。ドレフュス事件の推移に大きく影響したのは、作家エミール・ゾラが1898年1月、オーロール紙に発表した「私は告発する!」と題された記事。映画の中では、反ドレフュス派の市民が、新聞やゾラの本を路上で燃やすシーンが衝撃的だ。「オーロール」以外にも、この映画には様々な新聞の映像がそれとなく挿入されている。ベルエポックのフランスは、大衆新聞の黄金時代でもあった。

以上、これらの5つのポイントのみならず、本作にはまだまだたくさんの19世紀フランスの魅力が詰まっている。

『オフィサー・アンド・スパイ』は6月3日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。


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《シネマカフェ編集部》

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