長澤まさみ、「エルピス」でさらに増す凛とした凄み

「エルピス―希望、あるいは災い―」で主人公・浅川恵那を演じる、「コンフィデンスマンJP」以来、4年半ぶりの連続ドラマ主演となった長澤まさみに注目

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「エルピス―希望、あるいは災い―」
  • 「エルピス―希望、あるいは災い―」
  • 「エルピス-希望、あるいは災い-」第4話(C)カンテレ
  • 「エルピス-希望、あるいは災い-」第4話(C)カンテレ
  • 長澤まさみ『MOTHER マザー』/photo:You Ishii
  • 「エルピス―希望、あるいは災い―」
  • 『MOTHER マザー』(C)2020「MOTHER」製作委員会
  • 『ロストケア』(C)2023「ロストケア」製作委員会
  • 『ロストケア』(C)2023「ロストケア」製作委員会

冤罪というパンドラの箱を開けた、かつての人気アナウンサーが、失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く社会派エンターテインメント「エルピス―希望、あるいは災い―」。早くもドラマファンが毎回期待を寄せる今作で主人公・浅川恵那を演じるのは、「コンフィデンスマンJP」以来、4年半ぶりの連続ドラマ主演となった長澤まさみ

初回から「圧倒された」「貫禄が素晴らしい」「一瞬で引き込まれた」など絶賛の声が相次いでいる中、第3話では長澤さん演じる恵那が、ついに独断で“正しさ”に突っ走ってしまう様子が描かれた。


希望か、災いか。冤罪をテーマに昨今の世相を反映する「エルピス」


「エルピス-希望、あるいは災い-」第4話

古代ギリシャ語で、様々な災厄が飛び出すことから「決して開けてはならないもの」の例えとしても用いられる【パンドラの箱】の中に残されたものを示し、【希望】あるいは【災厄】と訳されるという「エルピス」。

物語の舞台は2018年。報道局のエース記者・斎藤正一(鈴木亮平)とのキス写真を週刊誌に撮られるというスキャンダルによって、人気報道番組「ニュース8」のサブキャスターから一転、金曜深夜の脱力系情報バラエティ「フライデーボンボン」のコーナーMCを担当しているアナウンサーの浅川恵那(長澤さん)。彼女は、若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)がヘアメイク担当の“チェリーさん”こと大山さくら(三浦透子)から依頼されたことをきっかけに、岸本とともに、最高裁で死刑判決を言い渡された松本良男(片岡正二郎)の冤罪疑惑を追うことになる。

第3話では、恵那と拓朗が斎藤からアドバイスを受けながら、当時事件の捜査にあたっていた刑事と被害者遺族のインタビューに成功。一連の流れをVTRにまとめ「フライデーボンボン」の若手スタッフからも好感触を得て、あとは放送するだけとなったものの、最終的には放送局長から「放送不適切」とストップがかかってしまうところまでが描かれた。

それまで、あまりにも多くの「言いたいこと」や「言うべきこと」を飲み込み続けてきた恵那は、眠ることや、食べることがうまくできなくなっていた。拓朗がこの話を持ち込んでも初めは「面倒なことには関わりたくない」と話し、事件を報道した記憶すらなかった恵那だが、当時ニュースを読んだ「浅川さんにだって責任はあるかもしれない」という拓朗の言葉に我に返る。

いまさら冤罪を疑うことは国家権力を敵に回すことになり、もし追及に失敗したら無実かもしれない男性が死刑になってしまう。セクハラ、モラハラ、パワハラ常習の報道局出身のチーフプロデューサー・村井(岡部たかし)にもそう言われた恵那は、もうこれ以上、飲み込みたくないものは飲み込めない、と腹を決めるのだ。

なぜか眞栄田さん演じる拓朗と一緒だと、事件の検証で作ってみたカレーさえも食べることができる恵那。事件現場の八頭尾山近くの喫茶店でもそうだった。拓朗の空気の読めないマイペースさや、生半可な正義感は自己評価の高さの裏返しであり、それが恵那を安心させるのか。ただ、そんな拓朗にも同級生がいじめにより自殺した、という過去がある。

また、話題を集める鈴木さん演じる斎藤との関係も見逃せない。スキャンダルに巻き込まれても男性の斎藤は御咎めなしで、むしろ政治部官邸キャップへと異例の出世を遂げている。第2話では、エース記者の斎藤にプロポーズされたら「勝ちだ」とかつて思っていたことがどれだけ狂っていたのかわかった、と恵那が打ち明けるシーンもあった。

第3話ラストでは、冤罪疑惑のVTRを放送できなくなったことで落ち込み、飲み過ぎてしまった恵那と、そんな彼女を見た斎藤はなし崩し的に再び関係を持ってしまう。これは「もう迷わない」と宣言した恵那の思惑なのだろうか…?

とはいえ、恵那は岸本たちを置き去りにして、先に突っ走ってしまった。報道、とりわけテレビがもたらす映像の影響力は良くも悪くも凄まじい。それに長澤さんと「ラスト・フレンズ」(2008)や「若者たち2014」で共演している永山瑛太演じる、サングラスの長髪姿の男性も気にかかる。

当初は生気のなかった恵那が冤罪を追う目的を得たことで凛とした凄みを増していく様を、見事に体現している長澤さん。エンドクレジットに参考文献がずらりと列記されるように実際の事件を参考にして練られた脚本は、NHK連続テレビ小説「カーネーション」や土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」などを手がけ、今回初めて民放連続ドラマを執筆した渡辺あや渡辺さんと、TBS「カルテット」やカンテレ/フジテレビ「大豆田とわ子と三人の元夫」などの佐野亜裕美プロデューサーとの6年越しの企画を背負うだけの気概も感じさせる。


第7話 あらすじ(12月5日放送)


副総理大臣の大門(山路和弘)が八飛市出身だと気づいた恵那(長澤まさみ)は、新聞記者のまゆみ(池津祥子)に大門の身辺調査を依頼。かつての斎藤(鈴木亮平)の言動から、警察に対し絶大な力を持っていた大門が、事件に何らかの形で関与しているのではないかと考えたのだ。

一方、経理部へ異動した拓朗(眞栄田郷敦)もまた、引き続き事件を追っていた。しかし、新たな手掛かりは何も得られず、調査は八方ふさがり。このままでは松本死刑囚(片岡正二郎)を救い出すどころか、事件は風化してしまう。落ち込む拓朗が村井(岡部たかし)に愚痴をこぼしていると、そこへ、とんでもないニュースが飛び込んでくる――。

やがて、まゆみの協力により大門に関わる重要人物のリストを手に入れた恵那は、ある仮説を立証すべく、多忙な自分に代わってその人物たちを調べてほしいと拓朗にリストを託す。局の看板アナウンサーに返り咲き、もはや自分とは違う世界の住人となった恵那の態度に、不満とどこか寂しさを感じる拓朗。するとその矢先、拓朗の元に意外な人物から電話がかかってきて…。


大河ドラマから“ダー子”まで
役にとらわれない姿勢


1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年「東宝シンデレラ」オーディションのグランプリに選ばれデビューした長澤さんは、デビュー20周年を超え、ますます精力的に活躍している。

『キングダム』(19)で『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)以来となる2度目の日本アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝き、実話をベースにした大森立嗣監督作『MOTHER マザー』(2020)では新境地を見せ、人気シリーズの映画化第2弾『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(2020)と合わせて第44回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。

『MOTHER マザー』

シリアスな人間ドラマから「コンフィデンスマンJP」の“ダー子”まで、実に様々な作品・ジャンルに挑んできた長澤さんだが、『MOTHER マザー』でのシネマカフェインタビューの際には、「実は、(同作の)秋子を演じる前まで、明るい役や強い役が続いたりしていたんです。ワッと感情的な雰囲気を持つ役が多かったので、1度払拭したい思いがありました」と、チャレンジをいとわない姿勢を語ったことも。

また、台湾のドラマシリーズ「ショコラ」(2014)や中国映画『唐人街探偵 東京MISSION』(2021)などアジアでも知られる俳優となり、近年は生徒から教師になった「ドラゴン桜」シーズン2、歌声も披露する『SING/シング:ネクストステージ』(2021)、『シン・ウルトラマン』『百花』(2022)などに絶え間なく出演。現在は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で語りを務めているが、10月16日の放送回では「真田丸」(2016)以来の“出演”も果たしている。


『海街Diary』(2015)


綾瀬はるか、夏帆、広瀬すずとの共演で演じた四姉妹の次女・佳乃は、思っていることをはっきりと言う。信用金庫の窓口業務から営業に異動になり、坂下(加瀬亮)と外回りをするうちにその真摯な仕事ぶりに影響を受けていくキャラクター。真面目なスーツ姿の反面、男性関係で不運が続くとやけ酒するというギャップも。


『グッドモーニングショー』(2016)


長澤さんとテレビ局といえば、朝の情報番組のサブキャスター役を演じた本作がある。主人公は、ある災害現場のレポートで“失態”をした落ち目のキャスター・澄田(中井貴一)で、長澤さんは澄田と交際していると信じ込むアナウンサー・小川圭子役に。「初めての女子アナ役ということで、普段のお芝居の時の発声とも異なるので、現役の女子アナの方に発声指導を受けて視聴者に分かりやすく伝える大事さを知りました」と製作発表時にコメントしていた。


『マスカレード・ホテル』(2018)


ベストセラー作家・東野圭吾原作、木村拓哉ら超豪華キャストが共演したグランドホテル形式ミステリー。捜査のためにホテルにやってきた刑事・新田浩介(木村さん)の指導役を務めるフロントクローク・山岸尚美をクールに熱演。“お客様第一”という仕事に対する矜持が仇になってしまう(!?)山岸は必見。


『すばらしき世界』(2020)


前科者の三上(役所広司)が社会復帰を目指す密着番組を撮ろうと、ディレクター・津乃田(仲野太賀)を焚きつけるTV局プロデューサー・吉澤を演じた。西川美和監督との初タッグを「常に緊張感があり、コツコツと積み重ねる仕事だと改めて思った」と述懐していたのが印象的。

あるとき、ブチキレた三上の姿を見て慌てて逃げ出してしまった津乃田に、「撮らないなら止めに入れ、止めないなら撮って人に伝えろ」と、どっちつかずの“報道”は何も救わないと叱責したことも。社会からはみ出した人が「いまほど生きづらい時代ってない」と話し、三上を通じて世間に一石を投じるつもりはあったようだが、三上の密着にためらいを見せ始める津乃田とは異なり、映像を見ながら「面白い」と笑う姿もあった。


『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022)


「目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で、何が嘘か――」。まさに「エルピス」での真相追及かのようなセリフでお馴染みの本シリーズ。映画3作目ともなれば、ロケ地も(?)騙しもパワーアップ&スケールアップ。詐欺で変装するキャラクターが憑依し、役に振りきる“ダー子”は長澤さんの演技力を堪能できる。なお、今作ではジェシーやスタアはきっと世界のどこかにいる、と思わせる演出が心憎い。


『ロストケア』(2023年3月公開予定)


松山ケンイチと長澤さんが連続殺人犯役と検事役で初共演する、社会派エンターテインメント映画。松山さん演じる献身的な介護士・斯波宗典は、42人を殺害しながら「僕は42人を“救いました”...」と供述、長澤さん演じる検事・大友秀美は彼が言う“救い”や、“正義”に向き合うことになる。「正しいとはなにかを、悩み、心が揺れ動く役でした。私自身の迷いや心の揺れと、秀美の感情が良い方向にリンクし、良い演技ができました」と語っており、「エルピス」との共通点もありそうだ。


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《上原礼子》

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