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『この世界の片隅に』片渕須直監督、最新作『つるばみ色のなぎ子たち』は「喪に服す」平安時代の物語

『この世界の片隅に』片渕須直監督の最新作タイトル&ティザービジュアル&メイキング映像&題名公開PVが一挙解禁。

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口コミやSNSでの評判によって公開規模を広げ、史上最長となる異例のロングランヒットを記録、累計動員210万人、興行収入27億円を突破したアニメーション映画『この世界の片隅に』と長尺版の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』に続く片渕須直監督の最新作が始動。

5月21日に開催されたアニメーションスタジオ「MAPPA」主催のスペシャルイベント「MAPPA STAGE 2023」内にて、最新作『つるばみ色のなぎ子たち』のタイトル、ティザービジュアル、制作メイキング映像が一挙解禁された。

煌びやかな十二単に身を包み風情を重んじ和歌を詠んで蹴鞠を蹴りながら優雅な日常を送る。教科書に記されたそんな“平安”の千年前の姿。しかし、京都では死者数万人、死体は山に置かれ、町の外には野犬が蔓延っていた――。

この日、MAPPA主催のスペシャルイベント「MAPPA STAGE 2023」には、片渕須直監督と大塚学プロデューサーが登壇し、トークセッションを開催。会場に訪れた5,000人を超えるアニメファンの前で、最新作『つるばみ色のなぎ子たち』の情報が明らかにされた。

片渕監督は、「この映画は2017年に構想を始めて、既に6年になるのですが、やっと『題名』を皆さんに発表できるところまでたどり着きました」と感慨深げ。

また、大塚氏は「MAPPAは色んな監督・クリエイター・役者・原作と色んな作品を作るスタジオですけど、片渕監督の作品作りをMAPPAの一本の“ライン”として作っていく事に『この世界の片隅に』で限界を感じました。片渕監督の作品を作る、その為のスタジオを新たに作ろう!と2019年に始まった」と、立ち上げたアニメ制作会社「コントレール」について明かした。

会場では題名公開PVが上映され、ティザービジュアルと共に作品タイトル『つるばみ色のなぎ子たち』が発表された。


最新作タイトル『つるばみ色のなぎ子たち』に込められた意味とは?


「平安時代の話ですけど、ご覧頂いた今のビジュアルでも分かる通り、雅やかな十二単を着ていないグレー一色です。『つるばみ』というのはクヌギのどんぐりのことです。どんぐりの上には帽子があるんですけど、その帽子を集めると黒い染料になります。黒つるばみ、というのは布を黒く染めた、つまり喪服の色のことです。『なぎ子』というのは以前作った『マイマイ新子と千年の魔法』(09)という映画があるんですが、その映画には“千年前の少女なぎ子ちゃん”という子が出てきます。彼女と関係があるかもしれません」と片渕監督。

「もうひとつ、今回は海外にもお伝えするために英語のタイトルも作りました。『Mourning Children』、Mourningというのは朝という意味ではなく『喪に服す』という意味です。『Nagiko And the Girls Wearing Tsurubami Black』、日本語でいう『たち』は英語のタイトルでは『Girls』です。なぎ子と少女たち、そして喪に服す子どもたち。そういう色んな内容についての片鱗を散りばめました。今日はここまでに留めたいなと思います」と濁しながらも、タイトルに込めた意味を語った。

また、「平安時代というのは、色とりどりの十二単を来て、歌を詠んでのどかに暮らしていたのではないかと思われるかと思いますが、今ご覧頂いたように喪服を常に着ていて、その喪服を脱げないような時代でもありました。つまり常に人が次々と亡くなっているから喪服が脱げない時代でした。そういうことを我々はひとつひとつ当時の時代ってこうだったんだなと解き明かして、じゃあその中にいる人たちってこんな風だったんじゃないかな、というところから物語を起こしています」と説明。

大塚氏も「本当にとっても尖った映画。現代の物語としてもヒリヒリするようなものだなと思って非常に楽しみだと思っています」と期待を口にした。


スタッフ陣について


「今まで自分が仕事させて頂いて、この作品にはこういう人たちと一緒にやりたいなと思った人たちに集まって頂きました」という片渕監督。「監督補の浦谷千恵さんは『マイマイ新子と千年の魔法』から『この世界の片隅に』『BLACK LAGOON』でも監督補として一緒にやってきました」と語る。

作画監督には安藤雅司を迎えた。「安藤さんはかなり昔に一度仕事したことがあったのですが、本格的にタッグを組ませて頂くのは初めてです。『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』、最近出た『鹿の王 ユナと約束の旅』(21)も作っていらっしゃる作画の大ベテランです」。

また、「今日のタイトルを発表する時にかかっていた印象的な曲なのですが、これは千住明さんの作曲によるものです。千住さんとは平安時代をどんな風に音楽として作るのか一緒に研究させて頂いているんですけど、何よりも2000年に作った『アリーテ姫』(※劇場公開は2001年)という作品で初めて仕事させて頂いて、世界を描く客観性というものが秘められている作りに、今回はまさに千住さんがぴったりだと思ってお願いしました」。


深いリサーチを経た制作


その後、会場では「コントレール」のスタッフたちとの制作風景を収めた映像が放映された。色とりどりの十二単を実際に着用したり、現代と違って電気が通っていない平安時代の松明を実際に実践している様子や、「つるばみ色」の染色に挑戦する様子も収められ、それらがアニメーションに落とし込まれていく過程の一端が公開された。

片渕監督は、「初めはコスプレ衣装の十二単を着ていたのですが、本物とは全然大きさが違うので次には正しい大きさのものを取り入れてやってみたんですけども、それをするのがうちのスタッフだもので座る時にモタモタして上手くいかなかったんです。そこで狂言を演じておられる日本の古来の身のこなしを普段から行っておられる方にお越し頂いて十二単を着て座って頂いたらスっと一挙動で座られました。着慣れているというのはこういうことなんだなと思いました」とふり返る。

「松明は棒に布が巻いてあって、その布に油が浸してあって、それが燃えるのかなというイメージがあるのですが、実際は全然油は使わないんです。中で松とか杉とかの葉っぱが燃えていて、いろんな配合でどれくらい燃えるのかなと試してみたのですが、ビックリするくらい長く燃えて驚きました。それを僕と安藤(作画監督)くんが持って歩いているフリをしている映像があったのですが、松明を持って歩く時に、どうやって火を揺らさないように歩くのかな、というところから作画に起こすということをやりました」と明かした。

さらに「虫の培養をやっていました」との告白も。「平安時代に黒つるばみの服を着ているのと関係があるのですが、マラリアが流行って沢山の方が亡くなっているんです。マラリアは蚊が媒介するのですけど、蚊の幼虫はボウフラです。会社の中でボウフラを養殖して、それを観察してそこから作画を起こしました。(会場からは小さく悲鳴が起きる)めちゃくちゃ大変ですが、想像で描くのと違っていて、それを描いていたスタッフはコントレールで初めて仕事を始めた新人の方だったんですけど、そういう風に原画を描くまでに成長しました」と監督。

「ひとつひとつのことは画に起こしていたら通り過ぎてしまうようになるかもしれないんですけど、以前作った『この世界の片隅に』がひとつひとつ戦争中のものを解き明かして画にしていった時に、そこに住んでいる、その中に生きていた人たちの気持ちとか人間性が分かってきました。今回も調べていく中で1000年以上前の遠い昔の平安時代に住んでいた人たちが、我々とどこが同じでどこが違うのかというのが見えてきて、その見えてきた人々の物語にしたいなと思っているわけです」と、そこまで深掘りする理由について言及。

大塚氏も「本当に1000年以上前に生きた人たちを研究して実践して体感して、それを画にしていくという作業を今現場の人たちはしてくれていて、その説得力はスクリーンでも伝えることができるんじゃないかなと、今からでも自信があります。ぜひ公開を楽しみにしていてください」とコメントする。

片渕監督は、「『絵を描く』というその前に、『何を描くのか?』というところから始めていて。それだったらこんな風に書いていくべきだなという発見から始めていってるスタジオです。そういうことをやっているからではなく、これから画面を作っていくのに大変な作業が待っているので、題名をお披露目しましたけれど、完成はまだまだ何年かかかることになる…(大塚:あんまりかかると困っちゃいます!)かからないようにしたいけど、かかってしまうことになるんです。そういう時に一緒に仕事してくださるスタッフを募集しながら、まだまだ人の層を厚くしながら作っていきたいと思います」と、若手スタッフとの仕事について語り、意気込みを見せていた。


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《シネマカフェ編集部》

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