作品のテイストとは真逆の明るい現場
――北川さんは、初めて森田さんとご一緒していかがでしたか?
北川:私は最初、イン前にリハーサルをするので会う機会があると聞いていたんです。でもリハの場に森田さんはいらっしゃらず、子役さんとだけリハをやりました。なので、そのワセリンの現場で初めてお会いしました。今振り返っても、森田さんで良かったと思うことしかないです。
森田:うれしいです。
北川:内容としては緊張感のあるシーンも多い作品だけれど、森田さんはいつもこんな感じ、本当にゆったり時間が流れていて、おおらかなんです。ご本人は格闘技とか絶対やらない人だと私は思うんですけど。
森田:その通りでございます…。

北川:本当に穏やかで優しくてあったかい空気が流れている方だったから、「この方とだったらできる」と初めてお会いしたときに思いました。体も今と全然違うよね、本当に大きかったんです。だから、どれほどトレーニングをして臨まれたんだろうと。作品に臨むその姿勢にもすごく感銘を受けて、私もちゃんとやらなきゃと思いました。…なんか現場、すごい楽しかったよね!
森田:はい、全然殺伐としていなかったですよね。「カット」と言われたらケラケラ~と笑うような(笑)。
――作品のテイストとは真逆の明るい現場だったんですね。
北川:そうなんです。雨降らしのときも、待っている間ずっとしゃべりましたよね。
森田:沢山しゃべりましたよね! 景子さんは本当にすごくて、うわーっとあれほど涙を流していたのに「カット」がかかった瞬間、ケラケラと笑ってくださるんです。逆にさっきまで笑っていらしたのに、撮影スタート同時に一気に涙を流される。その瞬発力にどこからその涙が生まれてくるのか、「スタート」と「カット」の声だけで役に入り込む姿に衝撃を受けました。
北川:でもずっと(役として)いるのも疲れませんか?
森田:たしかにそうですよね。ですが、景子さんみたいにパッと役になれるのは難しいので、本当にすごいと思います。

北川:森田さんは何回も何回も重ねるうちに、すごくアジャストしていくんですよね。印象的だったのが、「私は走るのが苦手だから、格闘家みたいな走り方ができない」とずっと言っていたこと。走る姿はすごい美しかったんですけどね。
森田:いえいえ! 私の走り方があまり運動している人っぽくなかったんです。内田さんに「女の子みたいなかわいい走りだから、もうちょっと勇ましく運動できる感じで走って!」と言われて。なかなかできないから、内田さんと一緒に走りの練習をしました。
北川:内田さんと? あ~それ見たかった!
森田:公園の周り、道路とか、一緒に走る練習を撮影の合間に付き合ってくださいました。私が本当にできなさすぎて、3日目か4日目くらいにOKをもらいました。「でも、今のもかろうじてOKなだけで、ぎりぎりセーフ」と言われましたが(笑)。
北川:初号は全然大丈夫だったよ!
森田:そう言って頂けて安心しました!

――森田さんは、最初のシーンの緊張以降は北川さんとご一緒していかがでしたか?
森田:景子さんは毎回、私の体のことをケアしてくださっていました。すごく思いやってくださるやわらかいお気持ちが、夏希さんの多摩恵に対しての思いと重なる部分が私的にはあって。多摩恵をやる上でも、きっとこの夏希さんだからこそ、頑張りたいんだな、と。危険を冒してでもついていこうとすることは、景子さん自身の持っている温かさと相まったんだと感じました。それは恋愛でもあり、家族愛でもあり、人類愛でもあり。愛の形というのではなく、夏希さんの持つものに惹かれている感じが、私としてはありました。絶対に景子さんだったからだと思います。

