香港のレストランで働くキョウジ(浅野忠信)は店主であるボスの妻と秘密の情事を重ねていたが、ボスから彼女の殺害を命じられる。任務を果たし、国外に逃亡する船上で彼はミステリアスな女性・ノイ(カン・ヘンジョン)に出会う。彼女とその娘・ニドへの愛情によって、混沌の中をさまようキョウジの魂は安らぎを覚える。この関係が彼に救いをもたらすかに見えたが、運命は思いがけず複雑に絡み合っていた。タイの新鋭・ペンエーグ・ラッタナルアーン監督が『地球で最後のふたり』以来となる浅野忠信とのコンビで贈る作品。撮影も前作同様、ウォン・カーウァイ監督の作品でおなじみのクリストファー・ドイルが務める。第56回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門出品作。
cocoレビューを見るペンエーグ・ラッタナルアーン
浅野忠信にとって、『地球で最後のふたり』に続く、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督とのタッグとなった『インビジブル・ウェーブ』。本作で罪悪感を抱えながら、自ら死に向かっていく男・キョウジを演じた浅野さんに話を聞いた。
昨年のベルリン国際映画祭への出品を皮切りに、世界22か国もの映画祭で上映された注目作『インビジブル・ウェーブ』が5月26日(土)、公開初日を迎え、主演の浅野忠信と、共演の光石研による舞台挨拶が行われた。浅野さんにとって、ヴェネチア国際映画祭・コントロコレンテ部門で自身に主演男優賞をもたらした『地球で最後のふたり』以来となる、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督との再タッグ。光石さんは、同監督との仕事は今回が初めてだが、浅野さんとは10年来の付き合いになる。そんな2人が作品やアジア各国での撮影、そしてお互いについて語ってくれた。
『6IXTYNIN9 シックスティナイン』や『わすれな歌』など、作品のほとんどが、各国の国際映画祭で高い評価を得ているペンエーグ・ラッタナルアーン。そして、脚本家のみならず、グラフィックデザイナー、フォトグラファーとしても活躍しているプラープダー・ユン。タイ映画界を代表するこの2人のクリエイターが『地球で最後のふたり』に続いてタッグを組んだのが、海から海へと漂う船のように、とらえどころのない、そして帰る場所を失った男の魂を描いた『インビジブル・ウェーブ』だ。ラッタナルアーン監督とユンに、作品について話を聞いた。
愛する女性を自らの手で殺し、すべてを失ったキョウジ。海から海を漂う逃避行の中で、ミステリアスな女性・ノイと出会い、さまよえる彼の魂は一時の安らぎを覚える。ノイとの関係に救いを見出したかに見えたキョウジ。だが運命は複雑に、そして皮肉な形で絡み合っていた…。