定年退職した校長先生、森衣恭一は、妻に先立たれて1 人暮らし。そのカタブツさと偏屈さから近所では浮いた存在だ。訪ねてくるのは、可愛がっていた野良猫ミイくらい。猫が好きではない森衣は、なんとか追い払おうとするが、ミイはどんなに追っ払っても毎日やってきて、妻の仏壇の前に座っているのだった。そんなある日突然、ミイが来なくなる。そうなるとなぜか気になり探し始めると、自分の他にも、ミイを探している人たちがいることが分かる。皆、ミイに餌をやり、語りかけることで、どこか救われていた人たちだった。彼らとの交流の中で、先生の頑なな心が変化していく。ミイの存在が思い出させる妻のこと。忘れてしまわねばならないと思っていたこと。失くしてからでは伝えられないこと。校長先生は必死でミイを探すが…。
深川栄洋