先輩ディレクターとの理不尽な上下関係、制作時の被写体との接し方に疑問を持ちながらも、小さな映像制作会社で働きながらドキュメンタリー作家になる事を夢見る須山。未だその途中にありながらも、夢を語 り理解を示してくれる恋人もいる。ある日、取材現場での先輩の姿勢に憤りを爆発させてしまう。職場を無くした彼は、自らの新たな居場所を探すかのように、かつて希望を見失った少年を撮影したことのある大阪・西成へと向かう。しかし、1人で問題に向き合えない須山は、東京で取材した引きこもりの青年を呼びつけたり、行きずりの女性に愛を語ったりと切実さに欠ける取材を続ける。少年を探しながら街をさまよう日々。やがて、自らの甘さがもたらした結果から、一歩また一歩と後戻りできない道に迷い込んでいく――。
太田信吾