市川進、御年74歳。タバコ、トレンチコートにブラックハット…大都会のバー「Y」で旧友のヤメ検エリート・石田や元ミュージカル界の歌姫・ひかると共に夜な夜な酒を交わし、情報交換をする。そう、彼は巷で噂の“伝説のヒットマン”だ。今日も“殺し”の依頼がやってきた――。がしかし、本当の姿は…ただハードボイルド小説を書きたい作家、ペンネームは御前零児。ちなみに原稿は“時代遅れ”で全く売れてない。おまけに妻・弥生の年金暮らし、なんとも情けない始末。担当編集者児玉も、市川の“伝説のヒットマン”という噂を信じればこそ長年付き合ってきたが…実は、リアリティにこだわり過ぎた市川は“理想のハードボイルド小説”を極めるために、“殺し”の依頼を受けては、その暗殺の状況を取材しているのだった。エセ投資セミナーで金を巻き上げる守山の暗殺など、過去多くの事件に関わったと噂される“なんちゃって”ヒットマン市川に、ついにツケが回ってきた。本当は一度も人を殺したことがない市川は、敵のヒットマンに命を狙われ、妻には浮気まで疑われることに。
阪本順治