『完全なる飼育』シリーズ9作目。イギリスの演劇界で名を成した後、日本に凱旋帰国。その前衛的な作風で演劇界の寵児として一世を風靡した女性演出家・小泉彩乃。しかしながら、ここ数年は観客動員が伸び悩み、とことん追い込むその演出スタイルは俳優からも敬遠されている。新作舞台「完全なる飼育」の公演初日を2日後に控えている中、主演俳優が突如降板。中止にするしかないと諦めた彩乃が劇場を後にしようとしたとき、一人の青年・篠田蒼がやってくる。演技が上手いとは到底見えない蒼にもうオーディションは終わったと言い、追い返そうとする。だが、蒼はオーディションを受けさせて欲しいと懇願。2人きりの過酷な舞台稽古が始まる──。
加藤卓哉