1962年のラクナウ。英国から独立し、新たな国づくりの途上にあるインド。警察署長の9歳になる娘アンジャナと一家の使用人シャンカルの交流を通じて、ポストコロニアルの、とある上流階級の一家の生活が描かれる。近代的なリベラル思想を持つ彼らも、支配層であることに変わりはなく、彼らを頂点としたヒエラルキーは存続し、その中に取り残される人々が存在する。平和なお屋敷で、シャンカルにお話をねだり、豊かに空想を膨らませる少女アンジャナ。彼女が生きる世界は一見幸せだが、中国との国境紛争や人の死など、遠巻きに不穏な陰が見て取れ、彼女がおとぎ話から目覚める日が来ることを暗示させる。
イルファナ・マジュムダール