『歩いても　歩いても』現場が楽しかったのはYOUと夏川結衣、辛かったのは…？

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2008.3.7 Fri 16:13

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夏の終わりのある一日。15年前に亡くなった長男の命日のために老いた両親の家に集まった長女と次男の一家。何気ない、でもどこか懐かしさ、切なさを呼び起こす一家の一日と少しの時間を切り取った『歩いても　歩いても』がこのたび完成し、3月6日(木）に完成披露試写会が開催された。上映前の舞台挨拶に是枝裕和監督をはじめ、主演の阿部寛、夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、樹木希林、原田芳雄の総勢8名が登壇した。

父、そして亡くなった長兄へのコンプレックスをいまだに克服できず、不器用に生きる良多を演じた阿部さんは以前から是枝作品への出演を熱望していたという。「監督は人間の細かい部分までリアルに描いてくださるんです。映画の中で流れる時間は24時間ほどですが、実際に自分は家族とどのように過ごしていたかを思い出させてもらいました。撮影では監督の作る世界観に入り込んで、みなさんと一家族という感じで現場にいました」とふり返った。さらに完成した作品を観ての感想を求めると「これまでの自分とは違った顔をしており、気に入っています」と自信をのぞかせた。

是枝監督は本作の登場人物たちについて「男たちは小さいことにこだわるグジグジした人たち、女性は強さと残酷さを持っています。これはキャストの性格を反映させたわけではなく（笑)、自分の周囲の人間をリアルに、そして残酷に切り取りました」と説明する。監督自身は撮影を「夏の日の楽しい思い出となった」とふり返るが、キャスト陣に「楽しかったよね？」と同意を求めるもキャスト陣の反応は薄い…。

“楽しくなかった派”の筆頭（？）、父親役の原田さんは「作品同様に女性のみなさんがたくましい現場でした。我々男は心臓が1個ですが、女性の方は2個か3個お持ちのようで…」と撮影をふり返る。撮影中以外でも現場では完全に役に入り込んでいたようで「針のムシロ、座敷牢という感じでしょうか。たまった飲み屋のツケの請求が一気に来たような気持ちでした」と思い出すのも辛そうな様子。それだけに劇中での父親像が気になる。

YOUさん扮する一家の長女の夫役の高橋さんは「すごい母と娘・姑嫁の関係だな、と思いながら見てました。僕自身は息子役の（林）凌雅くんと、娘役の(野本）ほたるちゃんと遊んでることが多く、いかに彼らを飽きさせないかが僕の仕事でした」と撮影を思い出しながら懐かしそうな表情を見せた。

母親役の樹木さんは是枝監督の演出について「子役を監督がどのように動かしたのか、そこに注目して観ていただけると監督の力量と資質がわかると思います」と謎かけのような言葉を残してくれた。

ちなみに監督の先ほどの問いかけに「楽しかった」と手を挙げたのはYOUさんと夏川さん。長女のちなみを演じたYOUさんは特に樹木さんとの共演が楽しかったようで「私が一番尊敬している女性である樹木さんと母娘を演じられて嬉しかったです。人当たりはよくないけど本当は優しいんです。（樹木さんに）『タバコが煙たい』と言われて全員が外で吸う、という現場でしたが毎日が楽しかったです」と笑顔で語った。

良多の妻・ゆかりを演じた夏川さんは是枝作品はこれが3度目の出演となったが「監督には毎回驚かされます。今回は監督に全く迷いがなくて、どうしたいのかがすごくはっきりしていましたので演じやすかったです。撮影を終えて改めて、離れがたい素晴らしい現場だったんだと感じてます」とふり返った。

ゆかりの連れ子・あつしを演じた田中くんは「阿部さんにはセミを獲ってもらったりキャッチボールをして遊んでもらいました。夏川さんは宿題を教えてくれました」と撮影中でも子供らしい夏休みを過ごせたようだ。

是枝監督が「一つのうそもつかずに作った大好きな作品」と胸を張る『歩いても　歩いても』は6月下旬、シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。

《シネマカフェ編集部》

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