「阿部さんのダメッぷりに男は共感するらしいです(笑)」是枝監督が最新作を語る

『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭で柳楽優弥に主演男優賞をもたらし、前作『花よりもなほ』では人気絶頂の岡田准一を起用して時代劇に挑戦した是枝裕和監督。6月28日(土)に公開を迎える最新作『歩いても 歩いても』では、ある夏の日に久々に顔を揃えた一家のドラマを淡々と映し出している。「母の死がこの映画を作るきっかけになった」と語る是枝監督に作品について聞いた。

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『歩いても 歩いても』是枝裕和監督
  • 『歩いても 歩いても』是枝裕和監督
  • 『歩いても 歩いても』 -(C) 2008『歩いても 歩いても』製作委員会
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『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭で柳楽優弥に主演男優賞をもたらし、前作『花よりもなほ』では人気絶頂の岡田准一を起用して時代劇に挑戦した是枝裕和監督。6月28日(土)に公開を迎える最新作『歩いても 歩いても』では、ある夏の日に久々に顔を揃えた一家のドラマを淡々と映し出している。「母の死がこの映画を作るきっかけになった」と語る是枝監督に作品について聞いた。

「何も起きない物語にしたかった」という言葉通り、劇中では特に目立った事件が起こるでもなく、一日と少しの時間が静かに流れる。この“何が起こるでもない物語”を紡ぎ出す横山一家を、監督はどのように作り上げたのだろうか?
「樹木希林さんが演じた母親については、性格だけでなく言葉づかいや息子との接し方など、うちの母をかなり重ねています。ただ、それ以外の家族に関しては、キャラクターを事前に設定したり、一家を組み立てたりはしていません。とりあえず、朝の台所のシーンから脚本を書き始め、会話の流れの中でそれぞれのキャラクターや家族の関係が作られていったんです。上から一家を見ているというよりは、台所のあたりに入り込んで一家の様子をのぞいているような気分でした。脚本が書き上がって初めて、『ああ、こういう一家だったんだ…』と気づきました」。

本作における死んだ長男や、『花よりもなほ』の主人公の父親、そして『誰も知らない』の子供たちを捨てる母親など、監督の作品は、一貫して“不在者”をテーマにしているように思えるが…。
「昔はよく、是枝の作品のテーマは“死と記憶”だと言われてました。海外の新聞で、僕の写真の上に“DEATH & MEMORY”って書かれたこともあって、『おれが客ならそんな映画観たくないな』と(笑)。『誰も知らない』でカンヌに行ったときに、現地の記者に初めて『あなたは常に“不在者”と“残された者”を描いている』と言われて、“死と記憶”よりは自分の中でしっくりくるものがありました。それから、つい最近になって詩人の吉野弘さんの『生命は』という詩を読んだんですが、“生命は、その中に欠如を抱いており、他人にそれを満たしてもらうことで完結する”ということが書いてあるんです。花にはめしべとおしべがあって、受粉には虫や風といった他者が必要だけど、人間の生命もこれと同じである、と。この詩に出会って『自分の映画の世界観は、まさにこれだ』と納得しましたね。でも、自分でこうしたテーマを意識したことはないんですよ。無意識だからこそ描けるのかもしれないですね」。

配役に関しては「ほぼ全員、脚本を書き終えてから決めた」と言うが、この俳優のために脚本が書かれたのでは? と思わせるほど見事に全員がハマり役である。主人公で、死んだ長兄へのコンプレックスがいまだに抜けない不器用な次男・良多に扮した阿部寛さんとは今回が初仕事となった。
「阿部さんは、良多のようなダメな男の役はあんまりやったことないけど、直感で『出来るに違いない!』と感じてお願いしました。見事なダメッぷりでしたね(笑)。ダメ男なのにデカい! セットの日本家屋と明らかにサイズが合ってないんですよ。一家の中での良多の居心地の悪さのようなものが、よく出ていると思います。動くたびに(姉役の)YOUさんから、『デカいなあ』って言われてました(笑)」。

インタビューを通じ、“ダメ男”という言葉が幾度となく監督の口をついて出てきたが…。
「僕自身がそうなんですが(笑)、いまの40代の男性って、自分のことでいっぱいいっぱいなんですよ。映画を観た女性から『男ってのは全く…』って怒られました。逆に、男性は“こういうダメな男は自分だけじゃないのか!”と、良多にシンパシーを感じるみたいで、『実は、僕も次男でして』とか声をかけられます。決してダメな男性を許すつもりでこの映画作ったわけじゃないんだけどね(笑)」。
《text:cinemacafe.net》

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