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【シネマVOYAGE】絶望・孤独・悲壮…それでも生き抜く力『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』

オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』に登場するのは、インド洋をヨットで単独航海する“男”ただひとり。ほかに誰も登場しません…

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『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』-(C) 2013 All Is Lost LLC
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『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』に登場するのは、インド洋をヨットで単独航海する“男”ただひとり。ほかに誰も登場しません。回想シーンが差し込まれてストーリーが進んでいくというのもない。描かれるのは、一人旅をしていた男に降りかかるいくつもの災難──漂流物と衝突しヨットが損傷、浸水、無線の故障、悪天候、そしてヨットは沈没。緊急避難用のボートで脱出するも嵐や飢えや渇き、孤独と戦う日々。そんな“男”の生きる姿が淡々と描かれていきます。しかもセリフはほぼゼロに近い。

そんな映画の何が面白いの? と思う人もいるでしょう。けれど、そこはどうか諦めずに観てほしいんです。たとえそう思ったとしても、観はじめるとびっくり。106分間一瞬たりとも目が離せなかったことに、観終わった後に気づくはずです。

男がどういう人物なのか、なぜ航海に出ているのか、詳しいことは一切ストーリー上では語られませんが、生き抜こうとする男の行動の中にそのヒントがあって。多くを語らないからこそ、その背景を読み解こうとする。ちょっと変わっているけれど、それもこの映画の面白さなんです。

また、“男”を演じる名優ロバート・レッドフォードの演技が文句なしに素晴らしくて。語らずとも伝わってくる絶望感、孤独感、悲壮感…が、まるでセリフがあるかのように、頭に、心になだれ込んでくる。この男は果たして助かるのかどうか、どんな結末を迎えるのか、ギリギリのサバイバルは下手なサスペンス映画なんかよりも断然ハラハラドキドキします。

そして思うのは、生き抜くということも旅なのだということ。生きることの意味も生き方も人それぞれ異なりますが、壁にぶつかったときに必要な“生き抜こうとする力”はきっと同じ。それがリアルに伝わってくるのは、現在77歳のロバート・レッドフォードの俳優としての挑戦──体力との戦いになるであろうこの役をこの歳で引き受けたことでもあり…。そんな、彼のいくつになっても決して諦めない強さが、この映画の主人公“男”の諦めない強さと重なり、より感動してしまうんです。

ラストシーンも衝撃的です。あの映画のラストシーンってどうだったかな…と、映画全体は面白かったけれどラストシーンの記憶があいまいなことって、ありますよね。でも、本作のラストシーンは、忘れたくても忘れられないほど心を揺さぶってきます。ものすごく揺さぶってきます。まるで自分自身が8日間、大海原で遭難していたかのような、サバイバルしていたかのような、そんな命を感じる感動が最後にずどどどどーんと押し寄せてくる。この旅を疑似体験して決して損はない、そう断言できる映画です。
《text:Rie Shintani》

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