【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day3

27日、土曜日。6時20分起床。就寝が3時半だった割にはすんなり起きられてよかった。カンヌ出張時も3時間睡眠は当たり前だし、映画祭中には特殊な分泌物でも出ているに違いない。

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レイフ・ファインズ
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27日、土曜日。6時20分起床。就寝が3時半だった割にはすんなり起きられてよかった。カンヌ出張時も3時間睡眠は当たり前だし、映画祭中には特殊な分泌物でも出ているに違いない。

支度して外に出ると、雨上がりの様子。昨夜は結構降っていたけど、ちょうどいい時に上がったみたいだ。青空も見えそうだし、よかった!

7時に活弁士の山崎バニラさんを車寄せでお迎えし、劇場にお連れして楽器の設置とリハーサルに立ち会う。8時半に全体がまとまり、僕はいったん事務局へ。本日の予定を念入りにチェックして、溜まりに溜まったメールの一部に返信する。

10時に劇場に戻り、プチ司会。若者向けの「TIFFユース」部門の中の小学生以下向けのカテゴリー「TIFFチルドレン」にプログラミングされている「山崎バニラの活動大絵巻in TIFFチルドレン」の導入部に舞台に立ち、山崎バニラさんを壇上にお誘いする役目。バニラさんは自分で演奏をしながら弁士をするという日本で唯一の存在で、声優としてもドラえもんのジャイ子をはじめ数々のキャラクターで人気の多才な方だ。演奏前の口上も立て板に水、劇中の声の使い分けも絶妙で、落語好きの僕に言わせればまさに真打の芸!

昭和7年のアニメーション『大当たり空の円タク』をまず大正琴を演奏しながら弁士を付け、とっても面白い。客席もよくウケている! フォトセッションをはさんで、『ロイドの要心無用』へ。僕はロイドは立ち会えず、残念でならない。バニラさん公演、本当に面白いので毎年お願いしたいなあ。

劇場を出ると、シネマズ前のヒルズの往来が仮装した親子連れで溢れている。ハロウィンのスタンプラリーに並んでいるのかな? 大量のミニキッズを前に思わず頬が緩んでしまう。さらにレイア姫のコスプレ姿の若いおかあさんにときめいてしまい、一瞬写真を撮ってもらおうかと思ったものの、まずいかなと思って自重した…。

机に戻って少しパソコンに向かい、弁当を頬張っていると、あっという間に12時になってしまい、から揚げを大慌てで飲み込んで、EXシアターへダッシュ。メキシコ映画のコンペ『ヒストリー・レッスン』のQ&A司会。マルセリーノ・イスラス・エルナンデス監督がナイスガイで、主演のベロニカ・ランガーさんとの厚い信頼関係が伝わってきて嬉しくなる。ストレートなドラマに客席もあたたかい。

続けてシネマズに戻り、13時半から日本映画スプラッシュ部門『僕のいない学校』の上映前舞台挨拶司会へ。僕のスプラッシュは本作で開幕だ。各作品の思い入れはコンペ作品と全く差がない。全ての作品から話をじっくり聞きたい。コンペとスプラッシュを行き来することが僕にとっての映画祭の醍醐味なのだ。

日原進太郎監督と出演者のみなさんをお迎えしての舞台挨拶。僕は次回の上映でQ&Aの司会をする予定なので、その時にまとめて書くことにしよう。

14時にEXシアターに戻るべく劇場の外に出ると、とても晴れていて、そして暑い!こんなに蒸して暑い日が映画祭の最中に訪れた記憶がほとんどない。去年は寒くて週末には台風に直撃されたことを考えると、何という違い。野外上映には理想だなあ。

さて、今年からコンペの各監督に僕から個人的にインタビューし、壇上のQ&Aでは聞き切れない話をしてもらおうと思い付き、映画祭中のスケジュールに組み込んでみた。ただでさえ詰まっている予定をさらに増やしてしまい、完全に自分で自分の首を絞めている。だけど、せっかく各国から監督たちが来日してくれているのだから、その機会をもっと有効に活用すべきだと常々思っており、今更ながら深堀インタビューをすることにしたという次第。

EXシアターの楽屋で、まずは14時からメキシコのマルセリーノ監督とプロデューサーたちに話を聞く。マルセリーノが映画監督になったいきさつ、現在のメキシコのインディペンデント映画界の状況、メキシコの興行の様子、若手監督の製作環境、共同製作や海外セールスにおける他のラテン諸国との関係性、あるいはカルロス・レイガダス、イニャリトゥ、キュアロンなどがいかなる存在であるか、などなど、メキシコの映画業界最前線を語ってもらう。

いやあ、これは面白い。そして贅沢な時間だ。このインタビューを各国の映画人と出来たら、本が一冊書けそうだ。いや、本は無理としても、映画祭が終わって落ち着いたら公式HPやこのブログなどで紹介していくことにしよう。

続けて15時から相手を変えて、トルコのラミン・マタン監督にトルコ映画の現状を語ってもらう。当然のことながら、メキシコと事情は全く異なる。ジェイランのような世界的巨匠が存在する一方で、国内で映画館を占拠しているのは映画とも呼べないトルコ製商業映画であるということや、現政権下における映画製作状況や、同世代の監督たちと横の繋がりはあるか、トルコのアート系映画製作の現状などなど。

この個人インタビューは本当にちゃんと続けて、何らかの形に残すべきだ。これは貴重過ぎる。コンペを通じた世界の映画事情丸分かり企画だ!

インタビュー終わり、そのままEXシアターで15時45分からコンペの中国映画『詩人』のQ&A司会で登壇。これまた熱いQ&Aだった! ワールドプレミアで、客席からリウ・ハオ監督、主演女優のソン・ジアさん、主演男優のチュー・ヤーウェンさん、そしてプロデューサーのチョウ・キョンさんが登壇。ジアさんとヤーウェンさんが立ち上がると客席で黄色い悲鳴。おおっ、やはり現在注目されている人気俳優なのだ。

80~90年代を背景に物語を作ったいきさつを監督に語ってもらい、Q&Aはシリアスな方向へ向かうと思いきや、楽しく晴れやかな雰囲気に包まれた祝祭となった! しっとりと美しく、そして厳しい物語であるという映画の空気が会場に残ったまま、ソン・ジアさんの美しさとチュー・ヤーウェンの明るい機転が場の雰囲気を明るくしていく。映画が観客に響いた様子がひしひしと伝わってくるし、いやあ、なんとも素敵な雰囲気だ。まさにワールド・プレミアの作品をお迎えする場はかくあるべし。観客の熱気に大感謝!

思い起こせば、最初の日本の観客の質問がとても面白かったのだった。これはネタバレになるので書くのを控えなければならないのが残念。そのお客さんの口調がとても楽しかったので、場が一気に盛り上がったのだ。もっとも、場が冷えるパターンと紙一重なので、Q&Aの展開とはかくもスリリングなのだ…。

16時半に事務局に戻り、30分急ぎのメールを書き、17時過ぎに劇場へ。スプラッシュ部門の『メランコリック』の田中征爾監督による舞台挨拶司会。当初上映前の舞台挨拶の予定はなかったのだけど、僕の登壇スケジュールの都合で舞台挨拶をしてもらい(詳細は省くとして)、大感謝。作品のイントロダクションを語ってもらい、上映へ。

18時に事務局に戻り、急ぎのメールを出し終え、ハンバーグ弁当を頂く。美味しいけど、これはレンジでチンすべきだった!

18時40分にEXシアターに行き(事務局の席からEXの楽屋まで早歩きで約8~10分)、19時からコンペのトルコ映画『シレンズ・コール』のワールドプレミア上映へ。先ほど個人インタビューしたばかりのラミン・マタン監督と、女優のエズキ・チェリキさん、そしてプロデューサーのエミネ・ユルドゥルムさん。

ラミン監督がまたまた超ナイスな人で、10歳までフランスで育ち、アメリカの大学に通ってからトルコの映画大学で学位を取ったという国際派だ。とても聞きやすいアメリカン英語で的確に話してくれる。客席の反応もとてもよくて、『シレンズ・コール』のブラック・ユーモアが日本人にも通じたことを監督も喜んでいる。モンティ・パイソンからの影響があるかとの質問には、当然あるけれど、より近いのはジャック・タチですとの答えに場内大納得。

日本の女性の観客からは「つい東京から逃げたいと思ってしまう自分を笑っているようで、とても他人ごとではなくとても面白かった」との感想も。この反応はとても嬉しい! ユーモアは文化なので実は国境を越えにくい。そんな中でこの皮肉が効いた作品が日本の観客に響いたことを、監督はとても喜んでいた。いや、本作は音楽の使い方も絶妙に上手くて、ラストの曲まで笑える。曲で笑えるなんて! と思われた方は是非2度目の上映に駆けつけて頂きたい!

ワールドプレミアとして上々の雰囲気に、僕は興奮と安堵が入り混じった気持ち。

実は時間が超やばかったので、フォトセッション中にEXシアターを抜けて、シネマズにダッシュ。17時34分終了の『シレンズ・コール』の10分後の17時44分が、スプラッシュ『メランコリック』のQ&Aなのだ。

42分にシネマズ到着し、『メランコリック』そのままQ&Aへ。田中征爾監督、皆川暢二さん、磯崎義知さん、吉田芽吹さんの4名が登壇。田中さん、皆川さん、磯崎さんが結成したユニットの共同作業で製作したのが本作で、その背景を解説してもらう。脚本は3人で練りに練ったとのこと。皆川さんと磯崎さんは主演も務め、そしてヒロインとして参加したのが吉田さんという背景だ。

田中監督の機転を利かせた回答がいちいち面白い。ぐっとくる殺し文句を次々に放ってくる。ネタバレなので書かないけれど、僕がこの作品を好きであるレベルをさらに深めてくれる。アクションスリラーとヒューマンドラマの見事な融合である本作には、さらに異なるレイヤーが隠されているのだ。ああ、面白過ぎる。是非多くの人に見てもらえる展開が映画祭後に訪れますように。

上映終わり、20時半に会場外に出ると、なぜか大量の知り合いが劇場下にわらわらと集まっていて、次から次へとあいさつしているうちに21時を回ってしまい、急ぎパーティ会場に向かう。

コンペやアジアの未来の作品ゲストを招いたウェルカム・ディナー。この場は極めて重要なので、司会業は外してもらい、監督たちとせっせと交流する。そして声を張り上げて全員に対して歓迎スピーチ。これが毎年緊張しつつ苦労する瞬間なのだけど、今年はうまくできたかな? そして、作品どうしとても盛り上がっていて、雰囲気がめちゃめちゃいい。今年も良いゲストに恵まれた!

毎年のことながら、こういう場でウーロン茶しか飲めないのが悲しい。しかし、1滴も飲むわけにいかない。22時10分に会場を出て、EXシアターへ。昨夜同時刻に続き、今夜も緊張物件が待っている!

余裕を持ってEXシアター楽屋入りしたはずなのに、既にその人は到着して待っていた。レイフ・ファインズ!

『ホワイト・クロウ(原題)』上映が終了し、登壇。満杯の会場。溢れる熱気。僕がレイフ・ファインズ監督を呼び込むと、大歓声と大拍手。圧巻の大歓迎だ。すごい!

こういう方を紳士と呼ぶのだろう。質問の受け答えが優しい口調で知的に鋭く語られて、淀みというものが一切ない。名優と呼ばれる所以だ。茶目っ気も発揮してくれて、こんなに貴重で幸せな瞬間などなかなかない。Q&Aはほぼ順調に推移し、監督業と俳優業の区別の付け方や、ヌレエフ役のダンサーを起用した理由など、ベーシックで誰もが最初に知りたがる質問が順調に客席から出て、仕込んだのではないかと思えるくらいに嬉しい。

後半にちょっとヒヤっとする質問(前の質問者と同じ質問をする的な)があったけれど、難なく切り抜け、充実した時間はあっという間に過ぎてしまう。この場にいられた幸運を観客のみなさんと分かち合う!

レイフさんを送り出し、事務局に向かって歩いていると、知り合いのプロデューサーにお会いしたので立ち話。どうですか? と聞かれたので、「天気も良いし、審査員も良いし、ゲストいい人ばかりだし、お客さん来てくれているし、フルーツ・チャンとレイフ・ファインズという二日連続の重要物件も超盛り上がったし、3日目でこんなに良いことづくめで、後半が怖いです」と答える。これは本音。好事魔多し、気を引き締めないと。

0時半に事務局に戻り、チキンカツ弁当を今度はチンして食べてみたら、ああ、感動的に美味しい…。

1時からふらふらとブログを書き始め、そろそろ3時半。本日もしびれる一日だった! そして今朝が早かったので、限界が見えてきたようです。上がります!
《矢田部吉彦》

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