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【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day 9 &10

11月2日、金曜日。7時半起床。3時間睡眠はきついけれど、もう最後だと気合を入れて起きて外に出ると美しい青空。毎朝同じことを書いているけど、今年の天気は素晴らしい。こんな好天続きは過去に記憶にないくらいだ。歴史的好天!

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「アウォード・セレモニー」
(c)2018 TIFF 「アウォード・セレモニー」
  • 「アウォード・セレモニー」
11月2日、金曜日。7時半起床。3時間睡眠はきついけれど、もう最後だと気合を入れて起きて外に出ると美しい青空。毎朝同じことを書いているけど、今年の天気は素晴らしい。こんな好天続きは過去に記憶にないくらいだ。歴史的好天!

8時に事務局に入り、やり残しの業務に取り組む。パソコンを叩く。平行して午後のセレモニーの準備も進める。

映画祭は会期が10日間あるけれども、例年10日目の最終日に行っていたクロージング・セレモニーを9日目に行うこととし、贈賞を中心にした「アウォード・セレモニー」と改称して実施することになっている。9日目(つまり本日)に受賞結果を発表し、10日目には受賞作品の(再)上映を行うという試みだ。

以前は9日間で開催されていた時期もあるので、それほど違和感はないのだけど、やっぱり「えっ、もうセレモニー?」という感覚に襲われずにいられない。そして、結局は10日間でやっていた内容を9日間で実施しているので(コンペの本数も同じだし)、とても毎日が凝縮されていて余裕がなかった気がする。

自分でやることを増やしているのもあるけど(個人インタビューとか)、日中ほとんどヒマな時間がなかったし、つまりは自分が関わらない現場を覗きに行く余裕が皆無だったので、映画祭の全体像が例年以上に把握できなかった。晴天続きでアリーナの野外イベントとかとても盛り上がっていたみたいだし、覗いてみたかった。BEAMSと提携したファッションショーとかも見たかったなあ。そして他の部門のQ&Aも見たかった。

自分が関わった場所はとても充実した経験で最高だったけど、本当に他に余裕がなかった! 普段なら上映後の即席サイン会に並んでいるお客さんとおしゃべりなどもできたのに、今年は常に次の会場にダッシュする状態になってしまい、あまり感想や意見を聞くことが出来なかった…。この点は今年の大きな心残り。

11時半に中国の映画マスコミからの取材があり、30分ほど今年の作品に関する感想を語る。中国で注目される媒体であるらしく、こういう取材が中国映画の応募増につながっていくといいのだけど。

12時半にキザンの中華弁当を頂く。キザンはなんでこんなに美味しいのだろう!

13時半に「アウォード・セレモニー」の会場となるEXシアターに行き、ゲストを迎える準備をする。次々に会場入りゲストを隣接のフォトスタジオに案内し、公式写真を撮影するという段取りの誘導を手伝う。

15時から「アウォード・セレモニー」開始。僕は特に役目が無いので、会場の隅で見守る。

毎年書いているけど、僕はこのセレモニーが本当に嫌いで、できれば会場にいたくない。でも隠れているわけにもいかないので仕方なく見ているのだけど、逃げ出したい。受賞作品はいずれも素晴らしくて僕も嬉しいのだけど、9日間、いや、ここ2か月間、苦楽をともにしてきた作品群に優劣が付くのが本当に嫌なのだ。そして会場には受賞を果たさない作品の方が多い。冗談ではなく胸が張り裂けそうな気分になる。

だからこそ僕が逃げてはいけなくて、現実をみんなとしっかりと受け止め、願わくば彼らの残念な気持ちを吸収する存在にならないといけない。セレモニーが終わり、ロビーで出席者が退場してくるのを待つ。受賞者は別室で記者会見の待機をするけれど、そうでない人々はロビーに出てくる。

スプラッシュの青年たちや、コンペの海外ゲストなどに「くやしいですね! 申し訳ない!」と声をかける。本当に悔しくて、受賞を逃したブラジルのガブリエラ監督やメキシコのマルセリーノ監督と女優のベロニカさんのにこやかな笑顔を見たときに涙が溢れ出てしまった。その後ろに今泉力哉監督がいて「ヤタベさん泣いちゃダメっすよ」と優しく声をかけられ、受賞に至らなかった監督たちに逆に慰められるとは、なんと僕は大バカ者で、幸せ者であることか…。

もうダメだと外に出て空気を吸い、遭遇したエミール・バイガジン監督としばし語り合う。『ザ・リバー』、確実にコンペの格を支えてくれた作品であったと改めて謝意を述べつつ、今後の監督の企画などについておしゃべり。バイガジン監督は日本との合作を希望しており、何らかの形でお手伝いが出来るといいのだけど。

気分を入れ替えて、受賞者たちが控えている楽屋に赴き、みなさんを祝福する。もちろん僕も嬉しい。ミカエル・アース監督、エドゥアルド・デ・アンジェリス監督、マイケル・ノアー監督、いずれも僕が前から注目していた監督たちで、今回招聘が叶っただけでも嬉しかった上に受賞を果たしたとなれば、やはり注目した監督を粘り強く追いかけることの大切さを痛感する。

スプラッシュ監督賞の『メランコリック』は今年の大いなる発見であったし、実力者の武監督を手ぶらで帰すわけにいかなかったし(『銃』で監督賞受賞)、そして長らく助監督経験を積んだ野尻監督のパーソナルな物語でもある『鈴木家の嘘』の作品賞受賞は大いなる希望を映画界に与えることと信じたい。おめでとうございます!

受賞者記者会見が続くEXシアターを18時半に離れ、事務局に戻り、お弁当を流し込む。プルコギ風キムチ弁当で、とても美味しいのだけど、キムチの美臭が漂い、これから事務局隣接の会場で行われるパーティは大丈夫だろうか? 運営チームは頭を掻いている。ナイス!

19時にクロージング・パーティ会場に行き、司会をすることになっていたのでスタンバイ。ヤマを越えた安堵感も手伝い、弁当食べたら猛烈な睡魔が襲ってきてくらくらする。もう少し! と気合を入れて、19時半からパーティ開始。司会といっても大したことをするわけではなく、開始と終了のアナウンスをするくらい。パーティ中に参加者のみなさんと次々にお話しするうちに眠気も覚めて、最後の交流に注力する。

21時半にクロージング・パーティはお開き。会場を移動し、作品ゲストを中心にしたプライベートな打ち上げパーティへ。ついに僕もビール解禁で、激ウマの1杯を頂く。ああ、この瞬間のために生きている?

あとは0時まで夢のような時間。本当に今年はゲストに恵まれた年だった。幸せだ。

1時に同僚とラーメンを食べにいく。ハイボールと担々麺。幸せだ。

<11月3日>

3日、土曜日。昨夜は2時半に寝て、6時起床。二日酔いになるほど飲んでないので、大丈夫。7時半にゲストが宿泊するホテルに向かう。お見送りの一日だ。さびしい。

7時50分に『氷の季節』チーム。マイケル・ノアー監督の知己を得たのは今年の大きな財産だ。ハードな作品を作るやんちゃな監督。最高のキャラだ。そしてプロデューサーのルネさんほど感謝の念を伝えてくる人は滅多にいない。長い付き合いの始まりだ。

8時10分に『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』の主演俳優のチャバさんが出発。帰国したら舞台が待っており、実は本作が映画初出演が本作だったという。また次の映画作品を楽しみにしていますと告げて、お別れ。

ホテルで朝食を山盛り頂く。ゴージャス!

いったん事務局に戻り、席周辺を片付けて、臨時事務局撤収の作業を始める。

10時半にホテルに戻り、『堕ちた希望』のエドゥアルド・デ・アンジェリス監督をお見送りする。監督とは今回深い絆で結ばれた気がする。次作がかなりのビッグ・バジェット作品になりそうで、楽しみでならない。作品とともに、いや、作品がなくても日本にまた来て下さいと伝えて、しばしお別れ。

12時半に『ヒストリー・レッスン』のマルセリーノ監督とベロニカさんが出発。昨夜に続き、何度も何度もメキシコにおいでと誘われる。行きたい! 来週メキシコの映画祭で本作のプレミア上映があるとのことだけど、「その映画祭はビーチ沿いなのでゴロゴロするわ」とベロニカさんが笑いながら語る。仲の良い母子のようなおふたり、お迎え出来て幸せだった!

直後に「アジアの未来」のペルシ・インタラン監督。『ダイ・ビューティフル』のプロデューサーでもあるペルシさんと今回は全くお話しする時間がなかったのが残念だ。ジュン・ロブレス・ラナ監督の新作情報を教えてもらいつつ、またすぐ会いましょうねとしばしのお別れ。

13時に『三人の夫』のフルーツ・チャン監督と主演のクロエさんが出発。チャン監督としばし談笑できて嬉しい。「まあ今回の作品は評価が分かれるだろうからね」と受賞に至らなかったことにもサバサバした様子でこちらも胸のつかえが落ちる感じ。いや、本音ではないだろうけれど、ともかくいかにコンペでお迎えできたことが光栄であったこと、そしてツィッター等で見る観客の評価は軒並み絶賛の嵐であることをお伝えする。次の作品もすぐに取り掛かるとのこと。またお迎えできますように!

そのままロビーにいると、『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』のパールフィ・ジョルジ監督ご一行が現れ、あれ? と思っていたら「これからクロージングのゴジラ見に行くんだよ!」とのこと。さすがだよ、ジョルジ監督…。アニメファンとは聞いていたけど、あらゆる映像表現と映像技術に関心があるのがジョルジ監督なのだ。今回は14歳の息子さんも同行しており、彼もゴジラを楽しみにしている様子。パールフィ家と記念撮影し、再会を約束し、お別れ。

お見送りの合間に時間が空くと、ホテルに臨時設営したスタッフルームで待機するのだけど、座った瞬間に眠ってしまう。しかしこの昼寝の甘美なことといったら!

15時半に、ともにカナダのケベック出身で同じ便で帰国する『大いなる闇の日々』の主演俳優マルタン・デュブロイユさんと、ジェムストーン賞を受賞した『蛍はいなくなった』主演のカレル・トレンブレイさんをお見送り。カレルさん、超かわいい。あまり話は出来なかったけれど、北米で大きな存在になる日も近いはず。

カレルさんに「ジェムストーン賞のトロフィに名前を刻んで送りますね」と伝えると、それを聞いていたマルタンさんが「あれ? 僕のトロフィは? あ、受賞してないんだった」ととぼけ、僕らは泣き笑い。そして「僕のトロフィはここにあるよ」と自分の胸に手をあててポンポンと叩く。だめだよ。泣くよ。

16時、『ホワイト・クロウ』プロデューサーのガブリエラさんの出発の時間になる。数々の作品を手掛けてきたガブリエラさんと縁が作れたのは映画祭の大きな財産だ。将来審査員としてオファーしたくなる。今回の来日の感想、これから向かうロスで待っている仕事、それからニューヨークに渡ること、さらには配信時代の映画作りについても話し、最後の貴重な時間をフル活用する。落ち着いて知的でとても素敵なガブリエラさん、またお会いできますように。

17時半にコンペ『シレンズ・コール』のラミン・マタン監督ご一行が出発。映画祭序盤でラミン監督にインタビューしてトルコ映画最前線を語ってもらったのが遠い昔に思えるくらい、監督と知り合ってから長い時間が経った気がする。トルコの新しい才能と知り合えたことは大きく、将来必ず再会することを誓い合う。

本日のお見送りは以上にて終了。このまま帰宅する選択肢もなくはないのだけど、なんといっても映画祭はまだ続いている。自分の管轄ではないとしても、最後まで見届けたい。

ということで、18時に有楽町の東京国際フォーラムに行き、「特別上映」の『平昌2018冬季オリンピック公式映画:クロッシング・ビヨンド』の上映前トークショーを見に行くことにする。

まず女子スキー・フリースタイル選手の小野塚彩那さん、女子アイスホッケー選手の久保英恵さん、女子アイスホッケー選手の中村亜実さんの3名が登壇し、オリンピックの体験談を語り合うトークショー。そして本作のイ・スンジュン監督と、東京オリンピックのドキュメンタリー映画を監督することが先日発表された河瀬直美監督らが登壇。1時間以内にまとまったとても楽しいトークで、やはり来てよかった!

トークの最後に「お客様からの質問をお受けしましょう」とのことだったので、河瀬監督に質問したかった僕は真っ先に手を挙げたのだけど、司会の笠井さんは指してくれなかった! いい質問だったのだけどな! 散々Q&Aの司会をしてきて、最後に自分で質問して映画祭を締めようという自分勝手な目論見は実現せず! しかし、手を挙げても指名してもらえない観客の残念な気持ちを改めて体験できたことを今後のQ&A進行に生かせるではないかと思えば、これは最高のエンディングだったかもしれない!

六本木の臨時事務局に行き、最後の片づけをする。本日まで事務局は稼働しているので、まだ弁当がある! メンチカツ弁当を今期最後のお弁当として美味しく頂き、有終の美を飾る!

そのまま席でブログを書いて、ただいま23時。これから帰宅します。ついに、今年の映画祭も終了!

今年は過去に例のないくらいの晴天続き、ゲストもナイスな人々ばかり、そして観客のみなさんも大いに会場を盛り上げて下さいました。僕も体調万全のまま全日程を走り切ることができて、とても安堵しています。

今年も本当にありがとうございました! おつかれさまでした!!
《矢田部吉彦》

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