役は周りが作ってくれるもの「どう演じるかではなく、どう見えているのか」
「大抵の人は気持ちを抑えながら恋をしていくものだと思いますが、今ヶ瀬は抑えない。それどころか、傷つくこと前提で進んで行く。素直と言えば素直だけど、わがままと言えばわがままですよね。無理なのに、理想を持っている。分かっているのに、傷つく。ちょっと先の未来が見えているのに、そこへ向かう。これまでも、これからも、僕にそんなことはできません(笑)」と笑う成田さん。思いのまま突き進む今ヶ瀬を、「感情のまま」演じることはやはりなかった。
「恭一がどう思うか。そんな芝居の仕方でした。僕個人として今ヶ瀬をどう演じるかではなく、今ヶ瀬は恭一にどう見えているのか。そんなことばかり考えていましたね。どの作品もそうですけど、僕の役は周りが作ってくれるもの。人って、自分が何をしたいかじゃなく、ある意味自分以外が決めるものですし。演じる感覚としては、いないものというか。結局は、周りから見たらどんな存在なのか。それが中心にあります」。
やはり“冷静な器用さ”を滲ませるが、そのスタンスが最も功を奏したシーンの1つに、ベッドシーンが挙げられるのではないか。恭一と今ヶ瀬の間を行き来する満たされる気持ちも、満たされない気持ちも伝わってくる大事な場面だが、撮影には技術的な調整も伴う。
「綺麗ですよね。自分で言うのもなんだけど、すごく綺麗でよかった。でも、恥ずかしかった…。あれして、これしてって、見せ方とか考えなきゃいけないことが山ほどあるし、心が疲れます(笑)。撮影していて心が一番疲れるのが、ベッドシーンかもしれない。しかも、さらにアフレコで音を録るわけで…。恥ずかしい…。人を演じるって、恥ずかしいものなんだなと思いました(笑)」。