高校三年生の津川竜哉が強く英子にひかれたのは、彼が挙斗にひかれる気持と同じようなものだった。彼の年頃では、恋愛も、友情にしても、すべて計算にもとづいて成り立っていた。ある土曜日、竜哉は遊び仲間と銀座へ出たが、持ち合わせた金が八千円そこそこしかなかったためシロウト娘と遊ぶことに決め、帽子屋から出て来た英子達三人を誘い、竜哉は英子を独占した。五日後の試合の日、竜哉へ花束がとどけられた。彼はTKO勝ちしたが額に傷を負い、待ちかまえていた英子が自分の車で竜哉を病院へ送り、初めて二人きりの夜を過した。以来、二人はしばしば逢うようになった。夏に入る前、英子は逗子の竜哉の家を訪れ、二人は肉体関係を結んだ。だが竜哉は敗北を意識した。彼は英子を愛したのだ。ナイトクラブで英子が見知らぬ男と踊っているのを見た竜哉は、カッとなり男を僕り倒してしまう。英子は「あんた妬いてたのね」と言うと、新しい発見をしたように笑うのだった…。
古川卓巳