一夜の関係を共にしていたジョヴァナとヤーゴをけたたましい警報が襲う。突如として発生した正体不明のピンクの雲。それは10 秒間で人を死に至らしめる毒性の雲だった。緊急事態下、政府はロックダウンの措置をとり、家から一歩も出られなくなった人々の生活は一変する。友人の家から帰れなくなった妹、主治医と閉じ込められた年老いた父、自宅に一人きりの親友……オンラインで連絡をとりあううち、いつ終わるともしれない監禁生活のなかで、彼らの状況が少しずつ悪い方へ傾き始めていることを知るジョヴァナ。そして、見知らぬ他人であったジョヴァナとヤーゴも現実的な役割を果たすことを迫られる。父親になることを望むヤーゴに反対するジョヴァナだったが、やがて男の子・リノを出産する。ロックダウン以前の生活を知らないリノは、部屋の中だけの狭い世界で何不自由なく暮らしており、父となったヤーゴも前向きに新しい生活に適応している。しかし、ピンクの雲が日常の景色となるにつれ、ジョヴァナの中で生じた歪みは次第に大きくなっていくのだった……。
イウリ・ジェルバーゼ