キルギスの村にひとりの男が帰ってきた。23年前にロシアに出稼ぎに行ったきり行方がわからなかったザールクだ。記憶と言葉を失ったその姿に家族や村人たちは動揺するも、そこに妻ウムスナイの姿はなかった――。心配する家族や村人たちをよそに、ザールクは溢れる村のゴミを黙々と片付けるのであった。無邪気に慕ってくる孫、村人とのぎこちない交流に、穏やかな村の暮らし――。そんな中、村の権力者による圧力や、近代化の波にのまれ変わっていく故郷の姿が、否応なくザールクに迫ってくる。果たして、家族や故郷の思い出は甦るのか? 息子や妻の名前を再び口にすることはあるのだろうか?
アクタン・アリム・クバト