「突然ではございますが、昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館いたす事と相成りました」――。昭和30年代、映画館「オリヲン座」の館主・豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子・留吉(加瀬亮)が彼の遺志を引継ぎ、松蔵の妻・トヨ(宮沢りえ)とともに映画館を守ることになった。古い時代には、周囲の人々から“師匠のかみさんを寝取った若主人”、“不義理な女将”と陰口を叩かれた2人だったが、映画産業が斜陽化し始めても、貧乏に耐えながら互いを思いやり、映画の灯を照らし続けていくのだった。一方、そんなオリヲン座を一番の遊び場にしていた幼い子供たちがいた。祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)は、毎日映写室の小窓から名画を覗いて成長し、やがて大人になって東京で結婚生活を送っていた。しかし時とともに、互いを思いやる心を忘れ、別れを決意することとなった2人。そんな彼らのもとに、一通の招待状が届くのだった。国民的人気作家である浅田次郎の同名小説の映画化作品。
三枝健起