5日、コンペティション参加作21本の最後を飾るダーレン・アロノフスキー監督『ザ・レスラー (原題)』が上映され、主演のミッキー・ロークが大喝采を浴びた。『ザ・レスラー』でロークが演じるのは、80年代に人気を誇ったが、いまはドサまわりに甘んじているプロレスラー、ランディ・ザ・ラム。『レクイエム・フォー・ドリーム』などアロノフスキー監督のこれまでの作風とはがらりと違う、ドキュメンタリー・タッチで、初老のレスラーの生活を描く。ミッキーは大仁田厚も真っ青の有刺鉄線デスマッチなどにも、果敢に挑戦。心臓に爆弾を抱えながらも、リングを去ることができない男の悲哀と孤独を見事に表現している。満場の拍手を受けて迎えられた記者会見でミッキーは「深い孤独? そりゃ、詳しいに決まってるだろ」と言いながらも、「カムバックなんて、辞書を引けばいろんな意味がのってるぜ」などと涼しい顔。だが『ナインハーフ』など80年代に人気絶頂だったミッキー自身に重なる役どころでもあり、会場にいた記者たちの多くが彼の完全復活に涙を隠せなかった。(text/photo:Ayako Ishizu)