ロシアの社会問題を見据えた“母を捜して…”物語『この道は母へとつづく』
2005年のベルリン国際映画祭少年映画部門でグランプリに輝いた『この道は母へとつづく』は、孤児院で育った6歳の少年が「母に会いたい」──ただそれだけの想いから自分の人生を変えようとする、ロシア発のヒューマンドラマだ。母を捜して…的な物語は珍しいわけではないが、ロシアの社会問題を見据えていること、実話がもとになっていること、そして何よりも主人公・ワーニャ役に抜擢された子役、コーリャ・スピリドノフの演技がいい。「もしかしたら会えるかもしれない」というかすかな希望が、「絶対に会える!」という力強さに変わっていくその心情を見事に演じきっている。
FBIやCIAへのインタビューも行って撮影された『キングダム 見えざる敵』
“キングダム”とは、王族のサウード家による絶対君主制の王国サウジアラビアのことで、『キングダム 見えざる敵』は1996年に実際にサウジで起きたホバル・タワー爆破事件をもとに作られたサスペンスアクションである。リヤドの外国人居住区で勃発した自爆テロの真相を探るために4人のFBI捜査官たちが極秘捜査に乗り込み、想像を絶する闘いに挑む5日間を描いていく。
ハイテンションな歌とダンス、そしてあんなトラヴォルタに注目!? 『ヘアスプレー』
主人公はダンスとお洒落に夢中な女子高生・トレーシー。彼女の夢は大好きな地元ボルチモアの人気TV番組「コーニー・コリンズ・ショー」に出演して憧れのリンクと踊ること。ただ、ちょっとおデブな体型が悩みの種…。でも、トレーシーのいいところは諦めずに夢に向かって突き進むこと! どんなトラブルに見舞われても、どんな窮地に陥っても、持ち前の明るさで人生をハッピーに変えてしまう女の子なのだ。
トヨエツが強引で破天荒な父に扮した『サウスバウンド』で家族のあり方を再発見したい
主人公・上原一郎は、相手が誰であろうと納得いくまで闘う骨太な父親。税金の取り立てにきた区役所のおばさんに「だったら国民やめちゃお〜」と切り返し、修学旅行の積立金が高いと思えば校長に直接面会を求めたり…。子供にとっては恥ずかしくなるような人物である。しかも若い頃はアナーキストという過去があったりする。そんな一郎率いる上原一家がある日突然、東京から沖縄の西表島に引っ越すことに。そして子供たちは沖縄の地で今まで見たことのない父の姿を目にするのだった…。
ブログではなく手書きの日記が引き起こす切ないラブストーリー『クローズド・ノート』
携帯やメールが当たり前になった現代において、手書きの日記を付けている人はどれだけいるのだろうか。ブログも日記のようなものかもしれないが、本来の日記とはブログのオープンさとは逆──他人が入り込めない世界、自分だけの秘密を綴れる場所だったはずだ。映画『クローズド・ノート』は、そんな1冊の日記が引き合わせた2人の女と1人の男の切ないラブストーリー。
ゆる〜く“たそがれる”『めがね』は癒し効果バツグン!
あの『かもめ食堂』のスタッフとキャストが再びタッグを組んで贈る映画…というだけで期待が膨らみますが、今回は前作以上にゆる〜い時間が流れています!
人の痛みを知ることで自分の痛みと向き合う若者たちの物語『包帯クラブ』
“包帯クラブ”とは、誰かが傷ついた場所に包帯を巻き、その人の心の傷を癒すクラブ活動のこと。「包帯を巻いただけで大袈裟な」と、思う人もいるだろうけれど、ある少女は失恋の苦い思い出のあるブランコに、ある少年はサッカーの試合でオウンゴールをしてしまったゴールポストに包帯を巻いてもらうことで、昨日まで踏み出せなかった一歩を踏み出せるようになれた…。真っ白な包帯には言葉では説明できない不思議な力があるのだ。そう、これは他者の痛みを知ることで自分の傷と向き合い、前進していく若者たちの姿を綴った青春物語。
松田翔太に福士誠治に城田優…『ワルボロ』は、注目の若手俳優がハマりすぎ!
“ワルくてボロい”奴らのことを称して“ワルボロ”。ゲッツ板谷の原作(自伝的小説)を知っている人なら特に驚くネタではないかもしれないが、知らない人にとっては“ワルボロ”という言葉自体に「?」が付いてしまうはず。どんな映画か簡単に説明するなら…不良たちの青春物語。不良映画の代表『ビー・バップ・ハイスクール』再び! といった感じの青春グラフィティなのである。
子供はもちろん、大人たちにも夢や希望を語りかける『チャーリーとパパの飛行機』
幼いころは誰しも自分だけの空想世界を持っていて、そこで憧れのヒーローになったり、大好きな乗り物に乗ったりしたもの。この『チャーリーとパパの飛行機』もそんな夢のような世界を描いたファンタジードラマだ。
愛する人と時を刻む喜び、命の尊さを感じられる『Life 天国で君に逢えたら』
飯島夏樹という人物を知っているだろうか。日本人で唯一、8年間ワールドカップに出場し続けた世界的プロウインドサーファーだ。本作は38歳でこの世を去った彼の半生の物語──。
正統派美形のカン・ドンウォンが難役に挑んだ『私たちの幸せな時間』
いわゆる“いい男”であり、しかも演技力も兼ね備えている俳優は、ある時点にさしかかると美貌を封印しようとする傾向がある(と思われる)。それは外見ではなく中身(演技)を見てほしいからにほかならないが、少し昔でいうとブラッド・ピットなどがそうだった。そして現代の韓国の俳優、カン・ドンウォンもそのひとりと言える。
今年の夏は映画館と沖縄へ? 松ケンが紡ぐバンドウイルカ、フジの物語
イルカのフジ。過去のニュースでその名前を耳にした人も多いのではないだろうか。そう、この『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』は原因不明の病気によって尾びれを失ったバンドウイルカが再び泳げるようになるまでを描いたリアルストーリー。現在も沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館で多くの観光客の注目を集めて止まないバンドウイルカのフジと、そこで働く人々の姿を再現したドキュメンタリーのような映画なのである。
秘密と涙がたっぷり詰まった『ボルベール<帰郷>』は女性のための愛の物語
“VOLVER(ボルベール)”という言葉には様々な“帰郷”の意味が含まれているとペドロ・アルモドバル監督は語っている。彼の故郷、スペインのラ・マンチャを舞台にしていること、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』('87)以来、実に19年ぶりにカルメン・マウラとタッグを組んだこと、ヒロインに『オール・アバウト・マイ・マザー』('98)に続きペネロペ・クルスを起用していること、そして何よりも母の胸に“戻る”という、母娘の愛を描いていることが最も重要な帰郷であるというのだ。

