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【シネマモード】ドキュメンタリーで、ファッションに夢中!

今年は、ドキュメンタリーの秀作が続々登場しています。しかも、この春から夏にかけては、ファッション、デザイン、アート関連の記録映画が目白押し。そこで今月のコラムでは、いま気になるおしゃれドキュメンタリー3本を取り上げていきます。

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『ビル・カニンガム&ニューヨーク』
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  • 『私が靴を愛するワケ』 -(C) Copyright Caid Productions / God Save My Shoes, LLC. 2003 – 2013. All Rights reserved.
  • 『私が靴を愛するワケ』 -(C) Copyright Caid Productions / God Save My Shoes, LLC. 2003 – 2013. All Rights reserved.
  • 『私が靴を愛するワケ』 (C) Caid Productions, Inc. All rights reserved./ (C) Mattel, Inc.
今年は、ドキュメンタリーの秀作が続々登場しています。しかも、この春から夏にかけては、ファッション、デザイン、アート関連の記録映画が目白押し。そこで今月のコラムでは、いま気になるおしゃれドキュメンタリー3本を取り上げていきます。今回は、『私が靴を愛するワケ』『ビル・カニンガム&ニューヨーク』。いずれも、ファッショニスタ必見の作品です。

『私が靴を愛するワケ』はタイトル通り、女性たちがなぜ靴中毒になるのかを、検証していくお話。靴の歴史、驚きの真実を紹介しながら、長きにわたる女性と靴の関係性、そこに潜む欲望、セクシャルな潜在意識をひもといていきます。登場するのは、ディタ・フォン・ティース、ファーギーら“靴中毒”なセレブを始め、心理学者、ファッション誌編集者、マノロ・ブラニク、クリスチャン・ルブタン、ブルーノ・フリゾーニ、ピエール・アルディといったカリスマデザイナーら。時に勝手に、時に鋭く、時に理論的に“つい靴を買ってしまう”女心に迫っていきます。確かに、十分持っているはずなのに、美しい靴を見ていると、つい手ならぬ、足を出してしまう人は多いことでしょう。美しい靴を見つけたときの、息が止まるようなときめきと、それを間近に眺めたときのうっとり感といったら例えようもありませんよね。「試着をどうぞ」と言われても、決してその甘い誘惑に乗ってはダメ。だって、一度履いたら、予算オーバーだとか、今月はもう別の一足を買ったからとか、理性的な心の声も威力なし。買わずにはいられないのですから。

靴はそもそも実用品。履かずには生活できませんが、必要以上に持っていたり、美しすぎて&高すぎて履けない観賞用、痛くて履き続けられない短時間&車移動用、ここぞという時だけに履く勝負用などを持っていたりするなら、あなたも立派な靴中毒。もはやあなたの靴は実用品の枠を超えています。でも、心配いりません。靴中毒は世界的な症状だそうで、「VOGUE」誌のリサーチによれば、フランス版の読者の8割は中毒者。彼らが持っている靴の総額が平均して9,000ドルにのぼるのだとか。これは小型車1台分。「これってちょっと異常よね…」と笑えるあなたは理性的。笑えなかったあなたは、この作品を観て、「自分はひとりぼっちじゃないんだ」と元気を出してみてください。

ファッショニスタにおすすめしたいもう一作は、『ビル・カニンガム&ニューヨーク』。ファッション業界の人には有名なあのビルのお話です。ニューヨーク・コレクションに通っていた友人の編集者は、「ああ、よくコレクション会場で見かけたよ」と言っていました。

彼は何者なのかというと、「ニューヨーク・タイムズ」紙の人気コラムを担当する御年84歳のフォトグラファー。世界の名だたるファッショニスタたちを撮影している彼自身は、1年中青い作業着姿。でも、多くの流行を捉えてきたその審美眼には定評があり、彼を知らないニューヨーカーはもぐりであり、彼に撮影されることが、ニューヨーカーたちのステイタスなのです。

とにかく、彼のヒストリーは興味深いエピソードがてんこ盛り。華やかな世界に身を置きながらも贅沢を嫌い、昼は数ドルのランチで済ませ、高額なギャランティも受け取らず、インかアウトかでファッションを決して判断しない善意の人…。こんなオモシロ人物が、なぜこれまで映画にならなかったのか不思議でしたが、なんと8年間の交渉を経て、やっと許可を得たのだとか。2008年にはフランス文化省から芸術文化勲章オフィシエを受勲した際、「自分のしていることは仕事ではなく喜び」と語ったと言います。嬉しそうに自転車に乗ってファッションを追う姿を見れば、この言葉が嘘ではないことがすぐに分かるはず。NYがファッションの中心地のひとつであり続けているのには、彼の功績も大きいのでしょうね。彼はデザイナーたちのように流行を作り出すわけではなく、記録する人。彼のスタジオはニューヨークの街すべて。「最高のファッションショーは、いつもストリートにある」とビル自身が言っていますが、流行を撮りに行くのではなく、ストリートが語りかけてくるのを街角でひたすら待ち続けるそうで、それは雨の日も吹雪の日も同じ。安物の穴あきポンチョにテープを貼ってでかけていき、人々の生の姿を映し出すのです。そこに「近道などない」のだとか。本物のジャーナリストにしか発することのできない言葉、プロ魂を感じます。

ファッションは一種の自己表現とも言われますが、理解されたり批判されたりしてこそのもの。相手なしには自己表現にも意味がありません。つまりは観られてナンボのものなのですから、ビルのような人がいてこそ、ファッショニスタたちは着飾る楽しみを膨らませられるわけなのです。「私たちはいつもビルのために着るのよ」と語るのはアナ・ウィンター。19か20歳の頃から撮られているそうで、時には容赦なく黙殺されることもあるのだというから面白い限り。有名だから、高そうだから、そんなことはビルには無意味。様々なファッショニスタが登場する本作で、最も贅沢をしていないビルこそが、ファッションに最も真剣に向き合う人に見えました。世界でも最もファッショナブルな人々を追うビル自身は青い作業着と、自転車、継ぎはぎだらけのポンチョ、そしてカメラを身に着け、さっそうと出かけてきます。そこには、独自の審美眼と視点だけがあり、媚もなく、ブレもない。印象的だったのは、ポンチョにガムテープを貼りながら、「ニューヨーカーは物を粗末にしすぎる、何でも使い捨てにするんだから」とつぶやくビル。めまぐるしく変わりゆくファッション業界に身を置きながら、自身はそこに振り回されることがない。興味があるのは仕事だけ。実のところ、NYのファッションの中心にあるのは、ファッション誌でもエディターでも、デザイナーでもなく、ビル・カニンガムなのかもしれませんね。

ファッションにまつわる新たなる真実を教えてくれる、『私が靴を愛するワケ』『ビル・カニンガム&ニューヨーク』、ぜひチェックをお忘れなく!

(C) The New York Times and First Thought Films.
(C) Copyright Caid Productions / God Save My Shoes, LLC. 2003 ― 2013. All Rights reserved.
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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