役に没頭しすぎない「冷静でいなきゃできない」
「役に引っ張られるとか、そういうの全然ないんです(笑)。撮影中も、役と自分を分けている…はずですし。とは言え、分かれきってはいないと思いますけど。ただ、(役に)没頭しすぎるほうが危険な気はして。演じるって、冷静でいなきゃできないことだとも思う。抑えたり、出したり。頭で考えながらしなきゃいけないことは絶対にあって。感情のままドバッと行くほうが気持ちいいかもしれないけど。素直に生きちゃいけない場だと、僕は思っています」。
「そんなふうに考える自分が嫌いですけどね」と呟いてからの、冒頭の一言。「言わなきゃよかった(笑)」と茶目っ気まじりの後悔を見せるが、作品を重ね、キャリアを充実させていく中、その“冷静な器用さ”は見抜かれ始めているよう。
「監督など作り手の方々からは、『映画を撮りたい人でしょ?』と言われます。実際、そういう気持ちもありますし。全体を見て、『ここはこうだから』と理論的に考えたくなる。だから、共演者の方々と、それぞれの考えを持ち寄り、互いに意見を交換し合いながら作り上げていく時間が楽しい。面白いですよね、作品づくりって」。
そんな成田さんの出演作『窮鼠はチーズの夢を見る』で演じた今ヶ瀬渉は、「僕自身とは距離がある人」。大学時代の先輩・大伴恭一(大倉忠義)に再会した今ヶ瀬は、ずっと溜め込んできた彼への恋心をぶつけ始める。優柔不断で流されやすい恭一を、ぐいぐいとねじ伏せるかのように。