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『カメ止め』『ボヘミアン』『バッド・ジーニアス』…SNSが拍車をかけた今年のヒット作

2018年も残すところ、あとひと月余り。少々気が早いかもしれないが、今年の映画界をふり返ってみると、いくつかの“サプライズ”が思い起こされる。

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『ボヘミアン・ラプソディ』(C) 2018 Twentieth Century Fox
『ボヘミアン・ラプソディ』(C) 2018 Twentieth Century Fox
  • 『ボヘミアン・ラプソディ』(C) 2018 Twentieth Century Fox
  • 『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
  • 上田慎一郎監督
  • 『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
  • 『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会 
2018年も残すところ、あとひと月余り。少々気が早いかもしれないが、今年の映画界をふり返ってみると、いくつかの“サプライズ”が思い起こされる。

まずは、先日「ユーキャン 新語・流行語大賞」にもノミネートされた“カメ止め”こと『カメラを止めるな!』の社会現象化。都内2館から全国累計340館に拡大公開、観客動員数200万人、興収30億円超えの大ヒットとなった(11月現在)。

また、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞の『万引き家族』の大ヒット。実績ある是枝裕和監督の作品に安藤サクラ、リリー・フランキー、樹木希林、松岡茉優らの豪華共演とはいえ、世界三大映画祭の“最高賞”を受賞した“通好み”の作品が、国内でこれだけ大ウケすることはそうそうない。こちらも8月現在で観客動員約352万人、興収43億円超えとなっている。

『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会 
この代表的な2つの“サプライズ”に共通するのは、SNSを中心とした口コミの力。今年ほど、そのパワーを実感した1年はないだろう。


SNSから全国“感染拡大”『カメラを止めるな!』


本作は、監督・俳優の養成スクールであるENBUゼミナールのワークショップから生まれた自主製作映画。上田慎一郎監督はそれまで短編の秀作をいくつも生み出してきたが、劇場長編としてはデビュー作だった。その映画が海外の映画祭での評判や、いち早く観た著名人たちの「おもしろかった!」「何も言えないから、とにかく観て」といった口コミによって広がり、結果的にネタバレの抑止にもつながって“感染”拡大。

『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
さらに作品や上田監督、キャストたちをメディアが取り上げはじめると、映画関係者のほぼ全員がTwitterアカウントを開設、その小まめなSNS“対策”も鍵となった。イベントやメディア露出の告知、映画の感想へのコメントやリツイート、「いいね」など、SNSの積極的活用も実を結び、上田監督は(社)日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が選ぶ「第6回Webグランプリ」で「Web人 of the year」を受賞するまでに。

上田慎一郎監督
拡大公開が始まった8月初旬には、まさかの映画ランキングベストテン入り。『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『インクレディブル・ファミリー』などがひしめく夏休み興行の中、8月31日(金)に動員数100万人を突破、最高6位を3週連続で記録した。

『カメラを止めるな!』(C) ENBUゼミナール
「あ、“カメ止め”の人!」と知られるようになったキャストたちは、「痛快TV スカッとジャパン」や「ほんとにあった怖い話」、月9「SUITS/スーツ」などなど、バラエティやドラマなどに引っ張りだこに。キャストが勢ぞろいし、映画『カメ止め』の雰囲気を味わえるCMまで登場している。




なお、90億円を超え、2018年国内興行収入ランキングのトップ争いをしている『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』『名探偵コナン ゼロの執行人』もまた、両者とも根強いファンに支えられ、すそ野の広い口コミ伝播力を見せつけた。

『コード・ブルー』は邦画実写興収においてこの15年間でNo.1の大ヒット、「藍沢先生―!」「灰谷、頑張れー!」といったかけ声をかけられる応援上映も人気となっている様子。『コナン』は10月からの4Dアトラクション上映が拍車をかけ、シリーズ最高の興収記録を伸ばしている。

『名探偵コナン ゼロの執行人』(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
アニメといえば、『若おかみは小学生!』も「今年一番泣いた映画」「自然と涙が出てきた」など感動の声がSNSに溢れた。公開4週目で215劇場中95の劇場で前週越えという快挙に、一度、上映が終了したTOHOシネマズ系列で復活&新規上映が決定する異例の事態が起こった。『カメ止め』と『若おかみは小学生!』の2作品を比べて「人の起こした『奇跡』としか言いようがない」という声も上がっていた。

『若おかみは小学生!』(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

第3次「クイーン」ブームが到来中!『ボヘミアン・ラプソディ』


伝説のバンド「クイーン」の伝説の存在フレディ・マーキュリーの半生を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』のヒットが止まらない。11月17日・18日の公開2週目の週末は、578スクリーンで動員26万2,913人、興行収入3億8850万円を売り上げ、前週末対比で驚異の110%を記録。累計動員92万9,326人、累計興収13億2,144万円を達成した。

この数字は最終興収53億円を記録した『グレイテスト・ショーマン』の2週目週末の興収対比107%。劇場では満席・完売が続出し、「クイーン」世代夫婦、女性同士、大学生~20代カップルを含む幅広い層が駆けつけているという。

『ボヘミアン・ラプソディ』 (C) 2018 Twentieth Century Fox
SNSでは、観た人の多くが「これは映画館で観ないともったいない」「クイーンを全然知らなかったけど感動した」など、“ちょっと敷居が高いかな”と感じている層にも響くコメントを寄せている点が特徴的。若年層の観客が多いのは、こうした口コミも大きな影響を与えているようだ。また、あのライブを“体験”するべく、公開まもなくから“胸アツ”応援上映が始まっており、『カメ止め』『バーフバリ』のようなイベント感覚のアトラクション型映画鑑賞の側面もある。

『ボヘミアン・ラプソディ』 (C) 2018 Twentieth Century Fox
今週末11月24日(土)はフレディの命日にあたり、一部劇場ではフレディのメッセージつきポストカードを配布予定、TOHOシネマズ日比谷ではメモリアルイベントが開催される。日本を愛し、日本人に愛された「クイーン」。日本公演が世界的ブレイクのきっかけとなった1975年の第1次ブーム、CMに多用され、ドラマ「プライド」などで巻き起こった2004年の第2次ブームに続いて、いま第3次「クイーン」ブームが到来している。

もちろん『グレイテスト・ショーマン』も、批評家の評価は割れたが、観客の口コミパワーが凄まじかった。日本でも圧巻の歌声と胸躍るミュージカルシーンに魅了されるリピーターが続出し、公開後10週連続トップ10入り、あの『ラ・ラ・ランド』を超えてしまった。

キアラ・セトル、ゼンデイヤほか、ピンクやミッシー・エリオット、ケシャ、「ペンタトニックス」ら豪華なアーティストたちによるサウンドトラックのカバー・アルバム「グレイテスト・ショーマン:リイマジンド」も発売されている。

『グレイテスト・ショーマン』 (C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

“アジア”な映画が熱かった!


加えて、今年はアジア発の映画、もしくはアジアの俳優が主演を張って活躍する映画の躍進が際立った。まず、サンダンス映画祭・観客賞を受賞した『search/サーチ』は、全国わずか60スクリーンでの上映にもかかわらず、公開週末3日間で興行収入4,600万円を突破するスマッシュヒット。これは、同じソニー・ピクチャーズ配給で最終興収4億8000万円をたたき出したスリラー『ドント・ブリーズ』の139%にあたる。

全編PCの画面上で展開し、SNSの便利さと闇、親子関係への影響までも描き、「身悶えするほど面白い」「SNS利用者必見」「リアルに起きそうな問題を提示」などの声が上がった。

『search/サーチ』
アメリカでは、N.Y.、L.A.など9館の限定公開から全米1,100館まで拡大公開されてベストテン入り。主演を務めた『スター・トレック』シリーズの韓国系アメリカ俳優ジョン・チョーは先日、第34回インディペンデント・スピリット・アワード主演男優賞にノミネートされた。監督のインド系アニーシュ・チャガンティとともに、次に紹介する『クレイジー・リッチ!』も追い風となり、ハリウッドをアジア系クリエーターが席巻した。

『search/サーチ』
『クレイジー・リッチ!』(12月12日デジタル先行配信、2019年2月6日ブルーレイ&DVDリリース)は全米3週連続1位、初週末興収2,500万ドル超え、全世界興収2億3600万ドルという特大ヒットとなった最強王道ラブコメ(※Box Office Mojo調べ)。

ケビン・クワンによるベストセラー小説「クレイジー・リッチ・アジアンズ」を原作に、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』ジョン・M・チュウ監督が映画化。キャストもアジア系で占められ、“アジア版『ブラックパンサー』”ともいわれた。

『クレイジー・リッチ!』(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
全国順次公開中の日本では『オーシャンズ8』のオークワフィナ、『ハングオーバー』シリーズのケン・チョン、『ラ・ラ・ランド』のソノヤ・ミズノなど、脇役の個性に魅せられた人も多かった様子だ。

オークワフィナ/『クレイジー・リッチ!』(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
全米公開時には、自身のドキュメンタリーを手掛けたチュウ監督へ激励を送ったジャスティン・ビーバーをはじめ、ナタリー・ポートマン、ジェシカ・チャステイン、ドウェイン・ジョンソン、クリス・プラットら有名俳優が本作について相次いで投稿。

さらに、ハリウッドでのアジア系俳優の少なさを知ってもらうため、本作のキャストであるヘンリー・ゴールディングやハリー・シャム・Jr.などが参加した「ゴールドオープン(#GoldOpen)」と呼ばれるムーブメントが発生、無料上映が各地で行われた。ヘンリーとチャウ監督は上記の『search/サーチ』を応援するための上映会も開いたという。

ちなみにヘンリーは、ブレイク・ライヴリー、アナ・ケンドリックと共演し、全米で大ヒットしたサスペンス『A Simple Favor』(原題)など新作が相次いで決まっている。


一方、世界16の国と地域でタイ映画史上歴代NO.1のヒットとなった『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』は、日本でもまだまだ順次公開中。作品の“音”の世界や可能性を極限まで探求し、高品質な“音”を大音量で表現する「爆音映画祭」でも上映される。テストのマークシートを塗りつぶす音やカンニングの“ピアノレッスン”、“危険な回答”が交わされるSNSの通知音など、音によって緊張感が増幅するだけに、確かに爆音向き!

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(C)GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.
この映画も『カメ止め』と似ており、東京・新宿武蔵野館1館でのスタートながら、公開初日・初回から14回連続満席、2週目には全国・計42回上映のうち34回が満席に。「今年度ベスト級!」「全く飽きない」などの絶賛コメントに押されて緊急拡大公開、今年を代表するサプライズ映画の1つに数えられている。TBS「王様のブランチ」では「ハリウッドが注目するアジア映画の1本」としても紹介された。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(C)GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.
また、日本も決して無関係ではない学歴と経済格差の問題にも斬り込んでおり、「監督の視点に感服した」「単にスリリングなだけじゃない、深いドラマがあった」といった声も興味をそそった。そして、カンニングチームを率いる天才女子高生を演じ、「蒼井優に通じる美しさと存在感」といわれた9等身モデルにして、アジアのネクストブレイク女優チュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、日本の大ヒットを受けて緊急来日した。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(C)GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.
このほか、レバノン映画として初めてアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『判決、ふたつの希望』』も。8月31日に公開され、東京・大阪2館の最初の土日で計9回の完売、いまもまだ上映が続いている。あるトラブルをきっかけに、表出し増殖したヘイト感情は国を二分する法廷争いへ。「普遍的」でありつつも、見応えある法廷エンターテインメントとなっていることで口コミを伸ばした。

『判決、ふたつの希望』PHOTO(C) TESSALIT PRODUCTIONS-ROUGE INTERNATIONAL
第90回アカデミー賞外国語映画賞の韓国代表作品『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』もミニシアターランキングに4週連続ランクインするなど、注目を集めた。軍部が民衆に銃を向けた韓国現代史最大の悲劇・光州事件を映画化、シリアスな展開の中で笑顔と人情味あふれるシングルファーザーを好演したソン・ガンホや衝撃の実話に「泣かされた」という人が続出した。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 (C) 2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.
SNSで話題になり、観に行ってみると確かに面白い。だから自分もコメントを投稿したくなる(逆にイマイチの感想であっても)。そんな観客のSNS利用の流れが定着し、「みんなも観て」という言葉が飛び交った今年。

まだまだ『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』や『くるみ割り人形と秘密の王国』『シュガー・ラッシュ:オンライン』『映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS』『ドラゴンボール超 ブロリー』『ニセコイ』『アリー/ スター誕生』など話題作が続々控えているが、SNSではどんな盛り上がりを見せるだろうか?
《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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