代表作となった「セックス・アンド・ザ・シティ」によって、世界的ファッション・アイコンとなったサラ・ジェシカ・パーカー。番組が終了したのが1年ほど前。「最近、サラ・ジェシカの姿が見られなくて寂しい…」という方に朗報です。この夏、ついに登場するのが、最新主演映画『幸せのポートレート』。以前、BLOGにも書きましたが、この作品では、“キャリー”とは打って変わり、真面目でお堅いビジネスウーマンを熱演。6年もの年月をややエキセントリックなキャリーを演じてきたわけですから、そのイメージから抜け出すのは大変。と、思いきや今回演じたメレディスも、かなりヒステリックな変わり者。ニューヨークで成功したキャリア・ウーマンではあるのですが、婚約者の家族に初めて紹介される場面で、途端に拒否反応を示されてしまうほど、感じの悪い“エリート女”なのです。とはいえ、そんな役でも、サラ・ジェシカが演じれば、それなりにキュートに見えるから不思議。それもこれも、キャリーというキュートな変わり者を好演してきたおかげなのかもしれません。
6月に行われるサッカーのワールドカップ。サッカー好きの彼と一緒に、思いっきり盛り上がれるという人には楽しいイベント。でも、「ルールもわからないし、観ていて苦痛」という人もけっこういるもの。「全く興味を持てないことに彼が夢中で困っている…」という悩みは、どうやら世界共通のようです。
この夏の話題作ナンバーワン!といえば、絶対に外せないのが『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』。この前まで、一作目がヒットしていたかと思いきや(実は3年前の夏なのですが)、今年7月22日待望の第2作目がついに公開となるのです。すでに、4月29日から劇場前売券が発売開始となったのですが、何とわずか2日間で10,465枚という驚異の売れ行き。前作では、わずか2,661枚だったそうですから、393%にあたると業界では大騒ぎです。
先月、米経済誌「Forbes」中国語版が発表した“2006年フォーブス中国著名人ランキング”。NBAプロバスケットボールプレイヤーのヤオ・ミンや、女優のチャン・ツィイー、映画監督チェン・カイコーら、さまざまな分野で世界的な注目を集める有名人が名を連ねる中、総合ランキング4位に入ったのが、中国の若手4大女優のひとり、ヴィッキー・チャオ。可愛い顔をしていながら、暴行事件疑惑を巻き起こしたり、中国マフィアともめごとを起こしたりと、かなりワイルドな一面を持つ彼女。そんなヴィッキーの一筋縄ではいかない魅力が存分に発揮されているのが、新作『緑茶』です。顔はそっくりでありながら、性格は正反対という二役を演じている彼女。1人は、真面目で清楚なインテリ大学院生ファン。もう1人は、奔放な恋愛を繰り返す、ホテルのラウンジピアニスト、ランラン。彼女たちと同時に知り合った男は、「2人は同一人物では?」という疑問を持ちながらも、ミステリアスでスリリングな二股にのめり込んで行くのです。
18世紀に実在したプレイボーイ、カサノバ。彼の回顧録を元にした退屈な史劇か…なんて思って作品に臨んだら予想は見事に大ハズレ。いくつもの伏線が最後に収束していく展開は見事だし、華やかでキュートで楽しい恋愛ドラマでした。考えてみれば、監督はあのラッセ・ハルストレム。ただの史劇を撮るわけないんですよね。
「ジャージ」=「トレーニングウェア」というのは過去のことなのだそうです。ご記憶の方もいらっしゃるでしょうが、今年の初めに、第1階ベスト・ジャージスト賞というものが発表されました。“2005年でもっともジャージが似合う男女著名人”を一般からの投票と、その結果をもとにベスト・ジャージスト実行委員が選び出すというものです。結果は…若手のタレントに加え、モー娘系の女子で作ったフットサルチームGatasBrihantesH.P.の皆さん、格闘家の武蔵、そしてサッカー選手の宮本恒靖が受賞! でも、しっかりスポーツ選手が絡んでいるあたりに、「やっぱりジャージって、トレーニングウェアだよね」という認識を強くしてしまった私。なんだか不思議な賞なのです。
アイルランド人のクリスは、イギリスの上流階級のヒューイット家に気に入られ、お嬢様と結婚。富と名声を手に入れて“ウハウハ”な状態だった。そんなクリスが吸い寄せられたのが、これまたアッパーな生活には縁のなかったコロラド出身の女優のタマゴ、ノラ。このような場合、多くの男は「優雅な生活も大切にしたいし、単に性的な欲求だけで愛人との蜜月も続けたい」というのがホンネかもしれない。そんなクリスは様々な場面で運を味方につけて生き延びていく。運も実力のうちと言うが、“ウソをついたとしてもバレなければok!”、そんな考えにあっさり納得してしまうほどの強運ぶりを発揮していて、これまたうらやましい限りなのだ。
「男より女の方が欲求に対する執着が強いからおもしろい」と、先日お会いしたガルシア監督は話してくれましたが、男性であるにも関わらず、これほどきめ細やかに女性の心理をとらえていることは、女の私から見ても驚きでした。9人の女性たちの9つの愛の物語。どれも日常の中で起きる何気ないエピソードばかりですが、一瞬一瞬、様々な想いに揺られる脆い心がリアルに描き出され、溢れる感情に胸が締め付けられました。そしてそれでも生き抜く強さを持つ彼女たちは本当に美しい。最後にグレン・クロースが静かに放つ“We go on”、時は流れていく、という言葉が印象的でした。きっと女性ならば観た後に、誰かに話したくなる映画だと思います。
女性が人生の中で美しさを放つとき、それは必ずしも年齢的な若さや歓喜の時だけではないということを気づかされました。長い人生のあいだには様々な物語が繰り広げられますが、その中の10分だけを切り取り、はかなくも悲しい痛みを秘めた美しさとして描いていました。ワンカットワンシーン・約10分の映像というリアルな現場感も効果的だったと思います。
カサノバの“愛の伝説”は多くの人を魅了し、何度か映画化もされてきましたが、本作はまず主演の2人に期待をそそられました。本年度アカデミー賞にもノミネートされ、ラフなルックスと演技力で人気急上昇中のヒース・レジャー。そしてジュード・ロウ騒動に負けず、ファッション・アイコンとしての地位を確立している美しいシエナ・ミラー。今話題の2人の共演は、それだけで華やかです。
馬と人間の関係は歴史が深いからか、馬が人にもたらす癒しや奇跡は過去に何度もテーマとして取り上げられてきました。本作でも負傷馬ソーニャドールのリハビリをきっかけに、すれ違っていた父と娘、父と祖父の関係が修復されていきますが、日に日に再生されていく家族の絆は観ていてすがすがしく、素直にソーニャの復活を応援している自分がいました。そして、涙してしまいました…。
かなり出来すぎた話だな、というのが正直な感想。展開もほぼ予想通り。だけど、やっぱりホロリと涙を流してしまった私。雄大なケンタッキーの景色と、馬の優美さによるところも大きいかも。こんな上手い話があるものかとも思ったけれど、何とこれは実話がベースの物語。それに先日、日本の名馬ディープインパクトが見せ付けた驚異の走りを知った後では「とてつもなく強い馬っているんだよね」とも思うし。“強運も才能のうち”なのです。
不審な死を遂げた愛する妻の真実を知ろうとする夫婦愛。ケニア・ナイロビに蔓延る貧困とHIV。ただ観て感じて欲しいアフリカの想像を絶する美しい自然。この作品では、壮大なスケールで描かれるこれら3つのテーマが素晴らしくリアルに描かれています。『シティ・オブ・ゴッド』に続き、独自のカメラワークと映像美を見せたメイレレス監督を惚れ直しました! また、ストーリーが進むに連れて観る側の集中力がどんどん増してゆく不思議な感覚に襲われました。綿密な展開からは一瞬も目が離せませんよ。それにしても妻が死んだ後に、命をかけて真実を追究する夫…今の世の中、そんな泣ける夫婦がいるのでしょうか!? 憧れの夫婦像でもあります。
好き、愛してる、愛おしい。大切な人にその愛を伝えるために使う単語はたくさんあるし、それらはTVドラマでも日常でもたくさん溢れている。だけど「その想いに率直に生きるとはこういうことなんだ」「本当の意味はこうなんだ」、『ナイロビの蜂』を観た後、そう感じました。
「RENT」は映画以前に舞台を観ましたが、音楽がとても美しい作品という印象があります。映画もロザリオ・ドーソンをのぞいてほぼオリジナル・プロードウェイキャストなので、映画版もとにかく歌は文句なしに素晴らしかった。ストーリーは1990年、ニューヨークを舞台に、夢や恋愛やAIDS問題に揺れる若き芸術家たちの物語(オペラ“ラ・ボエーム”現代版)ですが、音楽が際立っている作品だけに、それを映像にすると、少々長いミュージック・ビデオを観ているような感覚に陥ります。でも、舞台とは違ってリアルなニューヨークのストリートや夜景を盛り込まれ、ファンタジックで印象的なシーンもたくさんありました。
52万5600分。1年を分で数えるとそうらしい。「人生の1年をどうやって計る?」。そんな歌で幕を開ける『RENT』。のっけからバンバン歌い出すので驚いた。ミュージカル好きの人にはたまらなく嬉しい展開だと思うけど、ミュージカル慣れしていない私は、いつ歌い出すのかと内心ビクビク。少し音楽が流れ出すと「また歌うの!?」とかまえて疲れた。せっかく映画なんだから、もう少し普通のストーリーの部分があればよかったかな…。なんて書いたら、原作のファンに怒られるだろうか。いやいや、その歌、踊り、表情。全てすばらしい。どれをとっても切れ味バツグン、こちらのエネルギーを吸い取ってしまうほどパワフルでリズミカルだからこそ、もう少し緩急が欲しかった。
素直でいることはとても困難だ。それでも可能な限り本音でいたいと思うのは、それが通じたときに感じる幸福感が他に代え難いものだから。もし自分が周囲の人々に正直になれず死を迎えるとしたら、残る悔いは如何ほどだろうか。 本作は約80分で描かれる、ある男性の死に際。「生存率は5%以下」と余命を宣告された主人公を演じるのはフランスを代表する若手俳優、メルヴィル・プポーである。すべてを捨て去ってしまいたいと思うほどの絶望、本当に失ってしまったとき内側に残るのは狂気、死を意識してなお打ち明けられない本当の愛…。痩せ細っていく身体と鋭い眼光にはいつも寂しさがあって、それが彼自身を物語る。ゲイカルチャーなど分かり難い文化の上で語られているが、死を意識した人間のうつろいや家族への思いには共感できる感情が見て取れる。
余命3ヶ月を宣告されたゲイのフォトグラファーは、その事実を告げぬまま、不仲の家族と和解もせず、愛する恋人を部屋から追い出す。『まぼろし』から始まったフランソワ・オゾンの死をテーマにした3部作の2作目の主人公は、相手にはその機会を与えぬまま、自分のほうだけ別れを告げて死んでゆく。これを勝手と見るか許せるかが好き嫌いの分かれ目。普通の話になりそうなネタにばっちりついた“オゾン印”は、子供を作るためにカフェで妻のセックスの相手を探している不妊夫婦のエピソード。死を前に父親から主治医まで次々と押し倒しそうな男の生への憧憬は、ひょんなことから女相手に子供を作ることで結実。もちろん女相手じゃムリなので、望みもしないのに3Pに付き合う羽目になった夫が気の毒やら笑えるやら。『スイミングプール』より『まぼろし』に近いウェルメイドなこの作品には少ないけれど、個人的にはこういうヘンで意地悪オゾンが好き。
淡々と、しかし着実に進むストーリー。「運命」が残した傷痕をなぞりながら、それぞれの人生の点と点が線として結ばれて行く…。その空気はまるでサスペンスドラマのように張りつめています。しかし何といっても注目すべきは女優たち。その圧倒的な存在感に、観ている私は思わず胸が締めつけられました。仕草のどれをとっても説得力があり、セリフなんて要らないのでは?と思わせるほど。女であるがゆえの苦しみ、葛藤、そしてそこに見え隠れする弱さ。運命とともに生きていくことの難しさを見事に表現しています。個性がぶつかり合うわけでもなく、だからといって完全に融合することもないキャスト。この最高の配役と演出に、タノヴィッチ監督の才能をうかがい知ることができるでしょう。
重々しくも華麗な邦題がぴたりとはまった一作。『トリコロール』シリーズのキェシロフスキの遺稿を元にしているだけにテーマは愛とモラルの闘いであり、そこには彼の大きな影が感じられます。しかし映画はその模倣に終わらず、タノヴィッチ監督ならではのダイナミックな質感と繊細な心理描写が相まって、万華鏡をイメージしたタイトルロール(これがまた深い!)から最後まで一気に引き込まれます。四姉妹の母親役を演じたキャロル・ブーケの老けっぷりには女優魂を感じました。石のように堅い表情と艶のない銀髪には鬼気迫るものすらあり、その佇まいは圧巻としか言い様がありません。ところが先日フランス映画祭2006の団長として来日した彼女は、額を出した外巻きのボブがよく似合っていてまるで少女のようでした。この奥深さ! 美しき年齢の重ね方を学ぶにも最適です。
今回の切り口は「からくち」。いつもは、映画にまつわる気になる点を、ちょっと厳しくツツいています。でも、「春を待ちながら…幸せになる映画」というテーマを掲げた今月。このテーマで、どうして辛口のことなど言えるでしょう。幸せな気分にさせてくれる映画なら、ちょっとぐらいの「?」や「!」なんて、どうでもいいや。今回は、そんな姿勢で行きたいと思います。