愛する人とどう過ごす? 『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち

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『わたしを離さないで』 -(C) 2010 Twentieth Century Fox
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観終わった後、あふれるほど様々な感情がこみ上げてくるのに、それを言葉にできない──『わたしを離さないで』は、息が詰まるほどの想いとはこういうことなのだと実感する映画だ。

主人公のキャシー、ルース、トミーの3人は美しい田園地帯にある寄宿学校ヘールシャムの生徒。そして、観客は物語が始まってまもなく、そのヘールシャムが現実世界ではない異世界だと気づかされる。外界から完全に隔離されたその施設で一体何が起こっているのか? 特別な存在だと教えられて育った子どもたちの身に何が起きるのか? その疑問は意外にも前半で明らかになる。であるのに、この作品に深くとらわれてしまう理由は、社会的、倫理的、SF的になりがちなテーマでありながらも、あえてそこを映し出すのではなく、3人の若き男女の恋愛、友情、絆に焦点をあてているから。現実とは違う世界であるからこそ、その世界に興味が湧き、興味を持つからこそ、普遍的な愛をより実感する。悔しいけれど、いつの間にか自分も映画の中に入り込み、等身大で物事を見ているような体験を味わうのだ。

イギリス最高の文学賞、ブッカー賞に輝くカズオ・イシグロが紡ぎ出すストーリーの面白さはもちろん、キャスティングに違和感がないこと、それも大きな魅力のひとつだ。小さな頃から一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーを演じるのは、『17歳の肖像』でアカデミー賞にノミネートされたキャリー・マリガン、『プライドと偏見』で同賞ノミネートのキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』への出演などでジワジワと注目を集める実力派アンドリュー・ガーフィールド。彼らの繊細な演技が涙を誘うという表現が安易に聞こえるほど、それぞれが心の葛藤を素晴らしく演じている。

互いに想いを寄せているキャシーとトミー、その想いに気づき3人の関係が壊れることを恐れトミーを奪ってしまうルース。3人3様に異なる愛のかたちと選択は誰もが共感するだけに、彼らに待ち受けている切なすぎる運命がより一層やるせなくなってしまうのだ。逃れられない運命、限られた時間のなか愛する人とどう過ごすのか…。涙と共に自分にとって何が大切なのかを考えさせられる、深い深いラブ・ストーリーなのだ。

《text:Rie Shintani》

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