【シネマモード】2010年のオスカー、その後…

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『トゥルー・グリット』 -(C) 2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
  • 『トゥルー・グリット』 -(C) 2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
  • 『わたしを離さないで』 -(C) 2010 Twentieth Century Fox
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1年が過ぎるのは早いなと、思うこの時期。お正月、クリスマスなどもそんな風に思いますが、やはり映画業界にいると、オスカーをひとつの区切りとすることもしばしば。ですから、そろそろ今年のオスカーの話題でも書いてくださいとお声がかかると、「もうそんな時期ですか…」と思うのです。そのわりに、去年の話題作、つまり受賞作やノミネート作品については、すっかり“過去の映画”のような気もしたりして(失礼!)。

でも、オスカー受賞者やオスカー候補者の場合は、その後の活躍次第で、旬が続いていたりもするもの。決して“過去の人”にならない俳優もいるものです。ちなみに、前回のオスカー受賞者&ノミニーは覚えていますか? 主演男優賞は、ジェフ・ブリッジス、ジョージ・クルーニー、コリン・ファースにモーガン・フリーマン、ジェレミー・レナー。ほとんどが、言うまでもなく引き続き第一線で大活躍している人ばかり。コリン・ファースとジェフ・ブリッジスに至っては、今年もそれぞれ『英国王のスピーチ』『トゥルー・グリット』(右写真)で印象深い演技を見せ、同賞を競います。前回はブリッジスの勝利となりましたが、今回はどうなるでしょうか。

もうひとつ気になる部門が主演女優賞。勝者はサンドラ・ブロックでしたが、こちらもオスカーを獲ろうが獲るまいが、その後の活躍に何ら変わりはなさそうなメリル・ストリープとへレン・ミレンに肩を並べてノミネートされたのが、『17歳の肖像』のキャリー・マリガンと『プレシャス』のガボレイ・シディベでした。

どちらもフレッシュな顔ぶれで、その後の活躍が期待される若手ですが、キャリー・マリガンは期待以上の成長を見せています。オリヴァー・ストーン監督作『ウォール・ストリート』でもなかなかの評判を得ていますが、素晴らしかったのが『わたしを離さないで』(上写真)の彼女。寄宿舎で育った幼なじみ、2人の女性と1人の男性との間に生まれた切ない恋物語のようでいて、もっともっと壮大な愛を語ったお話です。また、物語を推し進めていくのが3人の人生に埋め込まれた痛ましいまでの秘密。カズオ・イシグロの小説が原作なので、物語はドラマティックでありながら淡々としていて、主人公たちの切なすぎる運命を、神のような慈悲深い視点で見つめているのです。非現実的とも、SF的とも思える物語ですが、人々の感情をデリケートに切り取ったこの作品は、極めて現実的な情感にあふれています。

そんな作品だからこそ、キャスティングはひときわ大きな意味を持っていたことでしょう。過酷な運命を静かに受け入れていく様子を表現するには、諦めの中にも魂や愛を感じさせる力を持っている俳優でなければすべてが台無しに。若くしてそれが出来る人はそう多くはないはずです。でも、「キャリー・マリガンなら」と、製作陣が語り手であるヒロインに、彼女を選んだわけは本編が始まってすぐにわかることでしょう。彼女の演技について、いろいろ語ることはできるのですが、私が強烈にキャリーの才能を確信した理由について書くことで、その代わりとしたいと思います。それは、終演後のこと。彼女が随所で見せてきた表情が、作品の余韻として脳裏に深く刻まれていたことに気づいたのです。映画を観終わってから数時間は、その余韻を味わうたびに、涙がこぼれそうになって困ったほど。『17歳の肖像』でも素晴らしい演技を見せていましたが、『わたしを離さないで』で彼女が見せたのは、数段に奥が深く力強い才能だったのです。オスカー候補者としての誇りをいまも見せ続けているキャリーですから、本作で再度ノミネートされても不思議ではないのですが、今年は残念ながらノミネートなし。こうなると、もう何が基準なのかワケが分からなくなってしまうのですが、今年の主演女優賞候補者はまた凄腕ぞろい。ちょっと怖すぎる顔ぶれなので、キャリーには来年再度狙ってもらいましょう。

もう1人のガボレイ・シディべですが、かなり個性が強いだけに、キャリーのように出演作が続々…というわけにはいかないと思いますが、その個性と才能を放っておくほどハリウッドも野暮ではありません。『ラッシュアワー』でおなじみのブレット・ラトナー監督の最新作『Tower Heist』(原題)に出演するそう。エディ・マーフィー、ベン・スティラー、マシュー・ブロデリック、アラン・アルダら個性派の大物が登場する作品の中で、ガボレイがどう光るかが見ものですね。出来上がりが楽しみ!

このように、オスカーを機に注目される俳優たちは多いですが、引き続き活躍できるかどうかは本人次第。運も才能なのだとすれば、良い作品、製作陣と出会う運命をフルに使って、「オスカーを獲ったけど、その後見ないね」とか「その後、作品に恵まれないね」と言われない道を歩んでほしいものです。せっかくの才能ですからね。



特集「2011年 第83回アカデミー賞」
http://www.cinemacafe.net/special/oscar2011/
《text:June Makiguchi》

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