『第9地区』シャルト・コプリー 異色のオスカー候補作を南アフリカの異能の男が語る

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『第9地区』 シャルト・コプリー
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監督もキャストも無名の“未知の作品”だったにもかかわらず、全米公開されるやいなや1億ドル突破の大ヒット! 観客に愛されるばかりか、批評家や業界関係者の心もつかみ、アカデミー賞で作品賞など計4部門にノミネートされる快挙を成し遂げたのが『第9地区』だ。この快進撃に伴い、主演俳優のシャルト・コプリーも一躍時の人に。来日した彼は、「まさか日本に来られる立場になるとはね…」と照れて笑う。

南アフリカ上空に正体不明の宇宙船が現れるところから始まる『第9地区』は、社会派ドキュメンタリーと見紛うタッチのSFストーリー。国家は宇宙船に乗っていたエイリアンたちを難民として受け入れるが、その後エイリアンと地域住民の軋轢が深刻化。シャルト演じる主人公・ヴィカスは、エイリアンたちに居住区域からの立ち退きを迫り、強制収容所に移住させる仕事を任される。しかし、職務遂行中のヴィカスにまさかの事態が起こり…。
「この映画は基本的に即興演技で成り立っているから、脚本らしい脚本はなかったんだ。ストーリーの概要をまとめたものはあったけどね。ヴィカスを演じる上で特に気をつけたのは、彼の感情の変化。恐ろしい事態に見舞われ、変化を余儀なくされる彼を演じるにあたり、シーンごとの感情レベルをきちんと把握する必要があったんだ。そのため、僕は“怒り度”“病み度”“ショック度”といった項目を各シーンに設け、1〜10までの数字でレベルを表すようにした。自分のためのちょっとしたシステムだね。まずはレベル10のシーンを見つけ、『だったら、このシーンは5くらいだな』と引き算していったんだ」。

「ヴィカスに何が起こるかは、これから観る人のためのお楽しみにしておきたい」と語るシャルトの思いを考慮し、ヴィカスがたどる運命には触れないでおくが、「監督のニール(・ブロムカンプ)から最初にアイデアを聞いたときは『すごいな』と思ったよ」とのこと。
「僕は自分自身の思考を停止し、流れに身を任せるだけで十分だった。ヴィカスがたどる運命は、考えたくないほど強烈だからね。ヴィカスというキャラクターに演じさせてあげるような感覚を、僕は自分の中に保つだけでよかったんだ」。

プロデューサーとしての経歴を持つからか、作品が観客と出会う状況にまで気を配り、なかなかの秘密主義を発揮するシャルト。したがって、続編の可能性についても「続編の製作を望んでいるし、僕もぜひ出演したい。あとはタイミングの問題なんじゃないかな。どんなストーリーを希望しているかって? それは内緒だよ(笑)」とはぐらかす。そんな彼だけに、作品がアカデミー賞にノミネートされたことに対しても冷静だ。
「ノミネートされたことには感謝しているけど、大ヒットを記録したことの方が、僕を含めた関係者の今後に影響を与えそうかな。お金を儲けられる映画を作れるかどうかが、ハリウッドでの評価につながるような気がしているから(笑)。ノミネートは嬉しいおまけだと思う」。

少々皮肉交じりにハリウッド分析。アカデミー賞授賞式に出席した感想も、サクセスを遂げたばかりの新人俳優とは異なるものに思える。
「ポジティブな感想とネガティブな感想があるのだけど、とにかく興味深い体験だったのは確かだね。とんでもなくグラマラスで素晴らしい空気が充満していたけど、ちょっとだけ嘘っぽい感じもしたかな(笑)。皆がショウを演じているような、シュールな印象だったよ。ただし、自分と同じ南アフリカ出身のシャーリーズ・セロンと話せたのは嬉しかったね。監督のニールも南アフリカの人間だし、この作品を彼女がどう捉えてくれたのかを知りたかった。南アフリカに住んだことのある人間にしか分からないような、細かい目配せもいろいろなところに散りばめられているからね。そうでなくとも、僕は元々、彼女の大ファンだったから、僕の演技を褒めてくれてすごく嬉しかったよ」。

ヨハネスブルグに生まれ、12歳で短編映画を自主制作。ロンドンで演劇を学んだ後、19歳の頃から製作会社を運営。24歳のときには、南アフリカのTV業界史上、最も若い重役の座に就いたのだそうだ。

その後も、CMやミュージックビデオ、映画といった数々の映像作品を製作&監督。
「元々、俳優志望ではなかったから、友人であるニールから役を依頼されたときは驚いた。カメオ出演くらいかなと思っていたんだけどね」と笑うシャルトだが、80年代のTVドラマをリメイクした『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』が次回作として公開待機中。「今後も俳優としてやっていきたい」と語る。
「幼い頃は想像力が豊かで、『グーニーズ』が好きな子供だったよ。南アフリカにTVが普及したのは1976年で、73年生まれの僕は当時3歳。両親がTVを見せてくれるようになったのは、8〜9歳の頃だったんだ。それまでは音で遊ぶことが多く、物語の朗読テープを聴いたり、それを真似て楽しんでいた。その経験があるからか、演じるキャラクターを作り上げるときはいまでも声から作るようにしている。その後、TVというものを体験し、『これはすごい!』と感動したのを覚えているね。『声だけじゃなく、人間が映ってる!』って(笑)。ひとつのメディアとして心惹かれたし、物語を作る手段として映像制作を選んだのは自然な流れ。だからこそ、いま、こうして映画の世界に身を置いていることが嬉しいんだ」。

ハリウッド・サクセスを体現するセレブというより、アーティスト然とした雰囲気を醸し出している理由は、シャルトが歩んできた人生にある様子。今後も、彼らしい、彼だからこその活躍が見られそうだ。

《text:Hikaru Watanabe》

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